瀬戸内寂聴さんが亡くなった。最近まで作家、僧侶、講演者として活躍されていたので九十九歳で死去とは信じられないほどである。
氏がまだ瀬戸内晴美だったころ私は学生の結婚披露宴でお会いした事がある。新郎は大手商社の社員だったが実家の関係か比叡山で本格的に修行したことがあり、瀬戸内氏とは修行仲間だった。したがって元来の話し上手も加わり氏のスピーチは内容豊かで楽しいものだった。それに対し新婦は米国史専攻でゼミ生ではなく、話すべきエピソードもゼロ。まことにつまらないスピーチしか出来なかった。瀬戸内氏からは今どきの母校の教師はこの程度かと思われたかと思うと、うっかり出席を承諾した自分が腹立たしかった。
我々教師は恩師と言うことで通常スピーチの順番は早い。しかしあるときの婚儀では新郎と新婦はそれぞれ県都と第二の都市の出身だったので双方の国会議員や名士たちのスピーチが先行した。それ故に気楽だったが、航空料金を払って私を呼ぶ価値が果たしてあったのか?
別のケースでは新婦はわが大学の同僚の元ゼミ生だった(古参の彼は大学紛争の渦中で出席できず)が、私が出席したのは新郎の高校時代の恩師としてだった。当人とは授業以外にも山岳部の顧問と部員として特別に親しかったので話題には事欠かなかった。しかし、彼の級友の某君は一度立てば必ず満座を爆笑させるスピーチの名手だった。私がとても勝てる相手では無かった。日ごろ冗談ばかり飛ばしている彼が後年、某省の事務次官になるとは予想できなかった。官界は意外に懐の深いところだと認識を改めた。
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