2021年9月4日土曜日

首相の退陣

  菅首相が自民党総裁選への不出馬を表明した。全く突然のことで自民党議員たちにも寝耳に水だったようだ。テレビでは政治評論家たちがあれこれ不出馬の理由を論じているが、未だ推測の域を出ないようだ。より重要なのは首相としての業績評価だろう。むろん評価が定まるのは五十年後、百年後だろうが、同時代人としても無関心ではいられない。

 わずか一年間の施政だったが、コロナ禍や東京オリンピックやアフガン戦争終結と多事ではあった。その間、菅首相としては誠実に問題に向き合ったと言いたいだろうし、私も否定的にばかり捉えるのは公平でないと考える。それでも各社の世論調査が低下する一方だったのは認めなければならない。

 世論での低評価の理由は首相の発信力の低さではなかろうか。この一年間、菅首相の印象に残るスピーチを聞いた記憶がない。欧米諸国と違いいくら腹芸や忖度が横行する国柄とはいえ、やはり言葉で勝負する印象が皆無では人気が出ないのはやむを得ない。学術会議員の任命拒否の問題にせよオリパラ開催問題にせよ、信念を持って決めたのならもっと説得に努めるべきだった。それで野党側が納得する見込みは乏しいが、大事なのは国民の反応のはず。その結果がオリンピック開催への国民の一定の満足が、期待された内閣の支持率の向上とならなかった一因ではないか。

 ただ、諸外国からはコロナ禍にもかかわらずオリンピック開催の約束を守った首相と評価されるかもしれない。

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