NHKのBS1スペシャルが香港問題を取材した『香港ディアスポラ・ロンドン移民たちの一年』(7月17日放映)を録画で見た。このところオリンピックやアフガニスタン情勢など大イベントや大事件が続き私の関心も香港からやや遠のいていたので、録画再生が後回しになっていた。だが、香港人の苦境を改めて実感させられた。
番組が主に紹介していたのは二年前まで香港の英国公館で勤務していた青年サイモンの近況である。彼も香港の自由が失われる事態を怖れて反中国デモに参加していたが、所用で本土を訪れた途端に逮捕され拷問を受けた。もう香港には居られないと感じ英国に亡命した。
国安法が提起され、英国首相が香港人亡命者を受け入れると発表したとき、私は旧植民地母国の責任を果たす措置として立派だと思った。それに変わりはないが、英国は生活の面倒まで見るわけではない。さらに亡命審査中は就労が認められないのでレストランなど不本意な場所で働かざるを得ないとのこと。そのため少しだが先輩であるサイモンは戸惑う同胞たちの亡命手続や生活相談が仕事になった。ロンドンの中国人街も本土政府を恐れ亡命者に冷たく、最近は数多い中国人留学生も香港人亡命者を敵視するとのこと。
英国は19世紀後半、ヨーロッパ大陸の革命家の亡命先となった(E.H.カーの名著『浪漫的亡命者』に詳しい)。当時は現代のように国家が出入国を厳しく管理することはなかったろうし、亡命者も家族のために使用人を雇用するなど余裕のあるケースが多かったようだ。自由を求めての亡命という点では同じでも、現代の香港人亡命者の困難には同情を禁じ得ない。
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