2019年10月17日木曜日

山中伸弥氏の思索

昨夜のNHK  BSプレミアムの『100年インタビュー』はiPS細胞研究の山中伸弥氏へのインタビューだった。私はこの番組をこれまで見たことがなく昨夜も偶然に途中から見たので、番組の紹介者としておよそ不適任だが、氏の思索の深さに感銘を受けたので書く。

最近の遺伝子工学の実状に疎い私は人間の遺伝質、例えば障害に関係する遺伝子の除去技術などの進歩に驚くばかり。逆にスポーツ選手のレベルを将来高めることさえ可能らしい。科学の大いなる進歩という他ないが、問題はそれほど単純ではない。

障害を持つ子どもの誕生の減少をめざす技術の進歩は親にとっても社会にとっても望ましい。じじつ、その可能性を知った親の9割は妊娠中絶を選ぶと聞く。私も当事者ならそうするだろう。どれほど障害者を助ける技術が進歩しても生活上の不便は健常者の比ではないだろうから。しかし、それはナチスが利用した優生思想とどれほど違うのか。

むろん、誕生した障害者の生命を絶つことと遺伝子操作で予防することの違いは大きい。しかし、遺伝子操作はすでに神の領域を侵していると見ることもできる。他にも遺伝子操作の失敗が恐るべき病原菌を地上に誕生させる可能性すら考えられるとのこと。斯界の先頭を歩む山中氏が研究の進展がもたらす地球大の影響に想いを致す姿に、氏の誠実さとともにパイオニアの苦悩を感じざるをえなかった。


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