2019年6月20日木曜日

法治国家を護る香港市民の闘い

幕末維新期に欧米列強が自国民を日本の司法に委ねることを許さない領事裁判権を我が国に認めさせた。こうした「不平等条約」の解消のためどれほど官民とも努力したかはよく知られている。しかし、開国以前のわが国では奉行は一身に警察、検察、裁判所を兼ねていた。すでに司法の独立を達成しつつあった列国が、それでは自国民への公正な裁判は期待できないと考えたのは無理からぬところがある。

英領植民地時代の香港には住民主権という意味での民主主義はなかったが、権力の恣意的介入を許さない司法制度は成立していた。今回の逃亡犯条例が成立すれば一国二制度は骨抜きになると恐れた香港市民が条例反対に立ち上がり、改正延期 ( 実質は撤廃 ) を強いたことは素晴らしい。司法の独立は香港市民の血肉となっていたと言ってもあながち過言ではない。

しかし、これまで中国に従順だった香港経済界も今回は林行政長官をバックアップしなかったとはいえ、中国が次の機会を狙うことは間違いあるまい。さらに、一国二制度には50年間という期限がある。香港返還当時は半世紀の間に中国自体が民主化し、法治国家になっていると世界が予想したが、現実はその予想を裏切りつつある。

我々はひとたび一党独裁が成立すればそれを解消することが如何に困難かを確認しつつある ( 高い理想を掲げた共産主義でさえ ) 。わたしは習近平個人がスターリンや毛沢東のような独裁者気質の持ち主であるとは今でも断定したくない。しかし、かれ個人を超えた既成利益固守の体制が法治国家への移行を困難にしている。われわれは法の支配を護る香港市民の闘いが孤立することがないよう努めねばなるまい。

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