先ごろのロシア大統領選挙で現役のプーチン氏が再選されたが、それに関して東京新聞の「本音のコラム」に作家の佐藤優氏が氏らしい表現で論評していた。
佐藤氏によれば「ロシア人の選挙観は欧米とはだいぶ異なる。.......天から『悪い候補者』と『うんと悪い候補者』と『とんでもない候補者』が降ってくる」「そのうち『うんと悪い候補者』と『とんでもない候補者』を排除するのが選挙なのだ。政治は悪い人間によって行われるというのが、ロシア人の共通認識だ」。つまりは政治学的に言う「政治とはより小さな悪の選択」という金言を氏は独特のユーモアで表現している。
トランプ米大統領主導の下で米英仏連合が、シリア政府軍の毒ガス攻撃を罰するためとの理由で軍事攻撃した。新聞各紙はそれを大きく報道している。そこに佐藤優氏式の分類を私流に当てはめれば、トランプ氏とプーチン氏が「悪い政治家」、アサド氏が「うんと悪い政治家」、イスラム過激派が「とんでもない政治家」となる。ただしシリア政府が本当に毒ガス攻撃をしたのなら、それを許したプーチン氏は「うんと悪い政治家」となろう。私はまだ断定できないと思っている。
米英仏連合のシリア攻撃への新聞各紙の社説は、「止むを得ない行動だ」との見出しの『産経』と「無責任な武力行使だ」との見出しの『朝日』を両極に、「化学兵器がこれ以上使われる事態を阻止することが先決である」とする『読売』が『産経』寄り、「対立の泥沼化を懸念する」との『毎日』が中間的立場をとっている ( 『東京』の社説は冤罪問題で無関係 ) 。
私はシリア政府軍が本当に毒ガス攻撃をしたならば『産経』の主張に賛成するが、反体制派をあと一歩まで追い詰めていた政府軍がそこまでする必要があったかに疑問を抱く。もし毒ガスを使用したのが反体制派なら ( その可能性がゼロとは思わない ) 、『朝日』の社説に一応の理があろう。何れにせよ、トランプ大統領にとって攻撃はオバマ前大統領との違いを見せつける必要と、北朝鮮への警告行動の両面の利点があっただろう。化学兵器や細菌兵器を持つとされる北朝鮮の隣国であるわが国にとっては、死者を出さずに終わった三國のシリア攻撃 ( メルケル独首相も支持する ) は化学兵器保持国への警告として悪い行動ではないだろう。