しかし、それを報じる米欧のメディアの情報源の「シリア人権監視団」は反体制派の機関であり、その情報をそのまま信じることはできない。東グータ地区へは僅かながら人と物の往来を許す「人道回廊」があると聞く。先日そこにも砲撃があったとの報道があった。しかし、対立する両勢力の動機を推測すると ( あくまで推測だが ) 、「人質」となりうる住民の脱出を妨害する必要性は反体制派の方が切実である。じじつ東グータ地区は今やアルカイダ系のヌスラ戦線の支配下にあるとの報道が散見する。
東京新聞の「本音のコラム」(3月3日)に常連寄稿者の師岡カリーマ氏の「敗者の暴挙」と題する発言が載っている。「人命軽視は反体制派も同じだ。ロシアの支援を得て、アサド勝利はもはや確実とされる。それでも罪なき市民に犠牲を強いて戦い続ける『敗者』に尊厳は見出せない」、「どこかしらの外国が援助している反体制諸派の対立と意地の張り合いが招く子供の殺りくより、理不尽なものがあろうか」。
師岡氏について私は父親がエジプト人と聞くだけでその政治的立場は全く知らない。しかし彼女も私と同様、「アラブの春」に際して反体制派の勝利による中東諸国の民主化を心から願ったと信ずる。しかし現実には反体制派間の協力は実現せず、狂信的な「原理主義派」が各地で支配的になったようだがそれは何故か。我が国のアラブ研究者たちはその現実を語りたがらないようだ。皮肉にも今ではヨルダンやモロッコといった王制諸国が、政治の腐敗や人権侵害があるとしても相対的に最も国民が安全に暮らせる国となっている。
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