2017年3月18日土曜日

女性参政権運動とオランダ総選挙

昨日、20世紀初頭の英国の女性参政権運動を描いた映画『未来を花束にして』( 原題 Suffragette )を映画館で見た。映画『メリーポピンズ』で子供の教育係のメリーを雇う上流 ( 中流上?)銀行家夫人もその一員で、戯画的に描かれていたのをご記憶の人はあろう。しかし今回の女性たちは運動に参加した労働者階級の女性たちで、運動参加ゆえに社会から ( 夫からさえ ) 理解されず、やむなく破壊活動( 放火さえも ) に走り犯罪者扱いされた人たちを共感を込めて描いている。その破壊活動を是認するかどうかは別とし、英国映画らしい重厚な作品だった。

彼女らが参政権を獲得したのは1918年のことで、映画に描かれた彼女らの体を張った努力とともに第一次世界大戦中の女性の社会参加の拡大 ( 男性の戦争参加のため ) も一半の理由だった。なお、ニュージーランドなどの英連邦諸国や北欧諸国の女性はすでに大戦前から参政権を獲得していた ( フランスは日本と同じ1945年 )。

オランダの総選挙でイスラム教徒の排斥を唱え大躍進を予想されていた極右の自由党は中途半端な勝利にとどまった。トランプ政権下の米国の混迷を横目で見たこともその一因と見られているが、中道右派のルッテ現首相が「男女平等などの社会規範を尊重できない人はオランダから出て行け」と訴えたり、「在留トルコ人への選挙キャンペーンを意図したトルコ閣僚の入国を拒否するなど ( イスラム教に )強い姿勢を示した」ことが与党への支持を回復させた (『朝日』3月16日夕刊 )。言わばウィルダース自由党党首の主張を半ば横取りすることで人気を回復したのであり、昨夜のBSジャパンのニュース「プラス10」はこれをルッテ首相の「抱きつき戦術」と評していた。ウィルダース自由党党首のトランプ同様の人格不安 ( トランプのエンターテイメント性もないのに ) を避けながら実質的に似た政策を期待できるなら国民が現首相を支持したのは理解できる。首相の作戦勝ちだった。

そもそも移民が作った国である米国が移民に辛く当たるのは大きな矛盾だが、キリスト教文化を中心としたアイデンティティを持つヨーロッパ諸国がそれを守ろうとするのは不当とは言えない。先人の苦闘の末に獲得した男女平等を認めない国からの移民を歓迎しないのは、選挙戦術としてだけでなく原理としても間違っていない ( 難民の保護とは別 ) 。どの国も他国の宗教的文化的規範に安易に口出ししてはならないが、それを改める気が皆無の人たちの移住を拒む権利はどの国にもある。
P.S.  以前のブログでカムイワッカの湯の滝を紹介したが、落石などの危険のため上流の滝には入れず、下流の低温の滝しか入れないとのこと。残念なことである。

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