噴火ではないが御嶽山では私もちょっぴり危ない目に会ったことがある。三十歳代中ごろ、やはり秋に友人と二人で御嶽山に出掛けた。木曽側から登り飛騨側に降りる予定で頂上に着いたが、天候が急変した。雨と霧の中で飛騨側の下山口に向け小一時間歩いたら山頂を一周して出発地点に戻っていて愕然とした。これ以上動くことは危険だと判断し、無人の頂上小屋で泊まった。翌日は飛騨側に向かう気力も失せ、そのまま往路を逆戻りした。
多分思い過ごしだが、遭難の文字がちらついた登山がもう一回ある。白馬山荘に一泊し翌日黒部渓谷の祖母谷温泉に向かった。数年前に逆コースでアップアップながら高度差約二千メートルを登った経験があり、下りならと油断したのだが、友人との二人( 三人?)登山と女性二人を含む数人での登山は下山とはいえ別物だった。途中から雨天となり、さらに夜になったが目的地に着けず、途中で雨中ビバーク( 緊急の天幕泊 )する他なかった。翌日下山を始めたら祖母谷温泉は目と鼻の距離だった。
御嶽山で一緒に怖い目に会った友人は、その一、二年後米国中部( カンザス州? )の大学に留学し、そこで間も無く落馬して亡くなった。なぜか説明はつかないが私は申し訳無い想いに捕らわれた。幸い夫人は遺児四人( ? )を立派に育てられ、今でも世界を旅行されておられる。私には遂に叶わなかったチベット西部の聖地カイラス山を訪ねられたと年賀状にあった。