2014年6月16日月曜日

日本的経営の勝利?

先日のテレビ東京の「カンブリア宮殿」に豊田章男トヨタ自動車社長が登場した。作家村上龍が中心のこの番組を私はほとんど見ていないが、今回は大好きな自動車を作る会社、それもトヨタ社長というので二時間近くを割いた。世界販売台数が一千万台を越え、今期25兆円を売り上げた日本最大の企業、33万人の従業員を率いる社長のプライベートな車はトヨタ車で下から二番目の小型車ヴィッツであり、彼は楽しそうに運転していた。

しかし、彼が社長に就任した2009年は、前年のリーマンショックの影響で決算は4000億円の赤字、それ以上に7900万台のリコールを迫られ、米国の公聴会で悪意からともとれるつるし上げに会った。渡米時には社長辞任もありうるとまで考えていたが、「私の作る車はすべて私の名前を冠している my name is on every car。責任回避のつもりはない」と反論した。その後のトヨタ系販売店や工場従業員との会合では彼らの温かい激励を受けた。ある従業員らしい男はトヨタのために「何か私に出来ることはあるか」と問い、トヨタ社長の感涙をさそった。彼らがトヨタ社を信じ、その関係者であることを誇りにしている様子は見てとれた。

かなり前、当時の奥田トヨタ会長の年棒が約6000万円だった(ソニーの出井会長のそれは一億数千万円のとき)が、アメリカの巨大会社のCEOはその十倍ないし数十倍だったろう。章男社長の座右の銘は「もっといい車を作ろう」で、自らサーキットで時速200キロで試運転している。震災後は東北を愛知、北九州に次ぐ第三の製造拠点と決めた。(計画はそれ以前からあったようだが)  たとえ国際競争上不利でも国内で年産300万台を減らす気はないと言う。

四十年ぐらい前、自らの期間工の経験を「トヨタ殺人自動車工場」というルポルタージュにして評論家の仲間入りをした人がいた。たかが数ヶ月、ルポ目的で働いた人間に何ほどのことがわかるだろうか。テレビ東京が経済界よりの傾向があることは無論承知しているが、私は某評論家よりも村上龍を信用している。

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