2022年11月29日火曜日

角を矯めて牛を殺す

  国会ではこのところ宗教団体等への寄付の制限をめぐって、伝えられる政府案よりも厳しい制限を要求する野党の政府追及が続いている。統一教会とそのフロント組織の冷酷非情な寄付集めが明らかになった以上、より厳しい制限を要求する野党側を応援したくなる。

 しかし他の宗教団体も街頭募金だけでその活動資金を賄える筈もなかろう。やはり信者の寄付により支えられているのだろう。それらと非情なマインド・コントロールによる資金集めを区別する事はそれほど簡単だろうか? そうした点を野党も理解する必要はあろう。

 一昨日(11月27日)の東京新聞の『時代を読む』との長文コラムに目加田説子氏の「角を矯めるに 牛を殺すな」という文章が載っている。それによると、NPOや支援団体が厳しすぎる寄付制限への反対の「緊急声明」を発表しているとのこと。私も健全な宗教団体のことは危惧したが、NPOや各種支援団体のことまでは考え及ばなかった。

 何も行動しない私などから見れば、これらの団体で活動する方々は地の塩、世の光のような人たちである。それなのに野党もだが新聞各紙はなぜ声明を黙殺しているのか? 不可解である。

2022年11月27日日曜日

碓氷峠のめがね橋

  『朝日新聞』の土曜夕刊に『いいね探訪記』という連載があることは知らなかったが、昨26日のそれは、「近代日本への レールを敷いた」との見出しで「碓氷峠のめがね橋」を取りあげていた。私は信越線を利用することは稀にだったが、特別の思い出が2度ある。

 最初は1952年。大学受験のため愛知県から上京したが帰りは別の経路を使うチャンスだと思った。中央線ではなく、遠回りの信越線を選んだのは前年に「日本最初の総天然色映画」を謳う『カルメン故郷に帰る』( 地方の映画館では黒白だった!)への心酔と、そこに登場する軽便鉄道 ( 草軽電鉄 )に乗りたいということだった。 当時の信越線の横川・軽井沢間はアブト式だったのでマラソン選手程度のスピードだった。下車した軽井沢は3月初旬なのに30センチぐらい積雪があった。それでも草軽電鉄は動いていたので北軽井沢まで往復した。車内も北軽井沢もほとんど無人だったが私は満足した。

 その後、信越新幹線の開通で横川・軽井沢間の鉄道路線が廃止されることになった。偶然その前日か前々日か軽井沢を通りかかったら横川との往復の記念乗車の催しを行なっていたので、用事はないが乗車した。車内は混雑して往復とも立ちっぱなし。正直、特別の感慨はなかった.............。

 信越高速道路が開通して国道18号は勿論、碓氷バイパスを通ることも稀になり、横川の峠の釜飯とも無縁となった。その気になれば支店が佐久インターや茅野インターの高速道の出口にあるが、もう半分で腹一杯になるのが買わない理由なのかも。

 

2022年11月25日金曜日

真の功労者

  私はサッカーファンではないのでカタールでの対ドイツ戦を同時中継では見なかったが、かなり長い要約番組で見て驚いた。メディアでは得点のシュートを放った浅野と道安に多くのスペースを割いて賞賛の嵐である。それは当然である。しかしゴールキーパーの権田にはほとんど言及すらない(『東京』だけが例外)。しかし私の見た限りでは彼の活躍は素晴らしく、それがなければドイツに3点か4点を献上していたのではないか。

 私はサッカーに詳しくないので別の意見があるかもしれない。それはともかく、世の中にはその貢献の大きさや重要さが知られず、十分な評価を得ていない人たちが多いのではないか。題名は忘れたが、NHKテレビに最近の建設や運輸などの紹介番組がある(あった)。最終電車と始発電車の間の時間に渋谷駅のホームの改修に合わせて線路を移動する作業は息が詰まりそうだった。また、港湾での巨大クレーンの正確極まる運転をする操作員など一瞬の油断も許されない人たち。せめて待遇の面で貢献に応えてほしいと思った。

 貢献といえば介護施設などで働く人たちの重要度は今後も増すばかりだろう。私だって何時世話になるかわからない。新しい器具の導入などでその労働を軽減するにも限度があろう。せめてその労働に見合う報酬を得られるよう願うばかりである。

2022年11月22日火曜日

元気な地方を応援したい

 俳優の日野正平が自転車で各地を探訪するNHKテレビの『にっぽん縦断 こころ旅』はその日の気分次第で見たり見なかったりするが、昨日は9年前の琵琶湖の沖島訪問の再放送だった。かつてそこで小学校教員を務めた女子教員がその廃校跡を訪ねてほしいとの依頼だった。

 私は半世紀以上前にゼミ合宿を琵琶湖北岸のマキノ町でしたことがあるが(海浜の漁村のようだった)、竹生島以外に琵琶湖に島があるとは知らなかった。日野が撮影チームと訪れた沖島はむろん竹生島よりずっと小さな島だが、上陸すると案外多くの子どもたちが一行を迎えたので、これでも廃校にしなければならなかったか疑問に感じた。しかし本土!との距離が近ければ教育効果からも廃校が正しい決定だったかもしれない。

 小学校跡は漁村特有の建て込んだ家々の中の路地の先の丘の上にあり、背の高い雑草に覆われていた。戦場ではないが、「夏草や兵どもが夢の跡」の句が頭に浮かんだ。いつもと違い一行が自転車に乗る場面は少なかったが、小さな島にも元気な子供たちが住んでいることを知り心が明るくなった。

  最近のわが国は少子高齢化が問題視され、とりわけ地方は衰退の道を辿っているやに聞く。9年前、元気な子供たちで賑やかだった沖島が今も変わらないことを願う。

2022年11月17日木曜日

キューバ・ミサイル危機の回顧

  NHKのBS放送の『映像の世紀』は現代史に関心を持つ者にはたいへん興味深いシリーズ番組で私も直接ないし録画で数多く見ている。今日、6月27日に放映された『キューバ危機』を見た。なぜこれほど遅れて見たかというと、ロバート・ケネディの『13日間』を読んでいた上に、事件当時にいよいよ原水爆戦争かと恐怖に駆られた体験を思い出したくない故もあった。

 ということである程度は事態を知っていたつもりだったが、ケネディ政権内の対立や葛藤を実写フィルムで紹介した番組の印象はやはり強烈だった。

 事件の発端は米軍のU2偵察機がキューバに建設中のミサイル基地を発見したためとは誰もが知っていたが、じつはソ連内のスパイのペンコフスキーが最初に情報をもたらしたため、偵察飛行となったと初めて知った。その後の米政権内の極秘討議では、日本空襲の主唱者で実行者だったカーチス・ルメイら軍最高幹部たちが一刻も早い爆撃によるミサイル除去を主張し、大戦当時は一海軍兵だったケネディには巨きな圧力となった。しかしキューバへの海上封鎖作戦によりソ連が折れ、トルコの米ミサイル基地の閉鎖との交換でミサイル撤去となったが、その間我が国でも親ソ派の人々は米国の「海賊行為」を糾弾した!

 こうして戦後最大の国際危機は解決に向かったが、自己の信念に従ってスパイ行為をしたペンコフスキーはソ連内で死刑となったという。彼の行為と悲劇をわれわれは忘れないようにしたい。

2022年11月14日月曜日

米国からの朗報

  今日は新聞休刊日なので確認はできないが、昨夕のテレビニュースでは米国の中間選挙で民主党がようやく上院で50議席を確保したとのと。米国民主主義にとって久しぶりの朗報である。

 選挙前の予想よりも民主党が下院でも善戦している。その理由はまだ確言はできないが、最高裁が女性の妊娠中絶を半世紀ぶりに不法としたことも一因ではあろう。なにしろバイデン政権下での物価上昇は日本とは比較にならない高率なのに民主党の善戦だから。とは言えこれでトランプの大統領復帰の可能性がなくなったとまでは言えない。

 トランプ人気がなぜ衰えないのか。移民の流入を防ぐための壁の構築が世界から問題視されても年間に100万人単位の不法入国ともなればバイデンでも建設中止が精々のところだろう。まして何十年か後には白人が米国人口の少数派になるとの予測ともなれば白人の不安は底流として無視できない。

 それとともにトランプの暴言がむしろ人気を集めている側面も見逃してはならない。極言すれば政治の大衆娯楽化である。米国だけではなく、ハンガリーやポーランドや最近はイタリアでも指導者の暴言まがいの発言がむしろ人気の源泉となっている。わが国でも最近のように「コトバ狩り」に深入りすると、岸田首相のように無難な発言だけを心掛ける政治家ばかりとなり、国民の政治への関心は低下の一途をたどるだろう。政治には「自民党をぶっこわす」と言った首相も時には貴重である。

2022年11月5日土曜日

あるドイツ人家族の歴史

  10日ほど前に知人から訳書をいただいた。東ドイツのある家族の100年近い家族史を同家の一員が纏めたもの(マクシム・レオ『東ドイツ ある家族の歴史』アルファベータブックス)。同国はヨーロッパでも最も激しい変化を経験した国と言ってよい。したがってドイツ史については我が国では膨大な研究の蓄積があるが、渦中で生きた一家族の歴史を通して下から照射し直す家族史の成果は如何?

 父方のユダヤ系家族と母方のアーリア系!ドイツ人の家族の歴史は10人余りの人物の名前を家族図で幾度となく確認しながらの作業の繰り返しで、投げ出したくなった。わずかに、戦後のベルリンでは街路樹は市民により燃料として利用され、無くなっていたとの記述には驚かされた。じつは戦時中の世田谷区の我が家でも、庭の桜の木を切り倒して風呂を焚いたから。

 しかし、ナチスの信奉者となった母方の家族と、ユダヤ人ゆえに追放されフランスに亡命し、フランス共産党系のレジスタンスに参加して活躍し、その縁で東ドイツの準高官となった父方の家族との波乱に富んだ家族史は、同じく戦争に翻弄されたとはいえ一体となって戦争中を生きた日本人との差は大きい。後半で東ドイツの諸相をどう評価するのか、期待したい。