2022年5月16日月曜日

「日本映画の名匠」ベストテン

   朝日新聞の土曜付録be(5月14日)に日本映画の監督の「読者のRanking」10人が載っている。1位から順に伊丹十三、黒澤明、小津安二郎、大林宣彦、市川崑、木下恵介、深作欣二、大島渚、森田芳光、新藤兼人。番外として現役監督では山田洋次が「圧倒的に」支持された。

 トップの伊丹十三は文中では『マルサの女』や『ミンボーの女』が挙げられているが、彼の名を一挙に世に知らしめたのは前作の「葬式』で、私もそちらを取る。彼の作品はどれも娯楽性満点だが、松竹や東宝といった大会社専属でない彼は全ての作品の人気に配慮しなければならなかったのだろう。黒澤明と小津安二郎は芸風こそ違え巨匠であることは疑いの余地なく、外国からの評価も高い。黒澤明の作品から一つを選べと言われれば『七人の侍』や『生きる』を挙げる人が多いだろうが、私は三船敏郎をスターにした『酔いどれ天使』を推す。志村喬の町医者が、嫌われ者のヤクザだが何処か見所のある三船を喧嘩をしながら正道に戻そうとするが、更生を前に抗争で犬猫のような無残な死を迎える。小津安二郎ならやはり『東京物語』か。

 私が学生時代から欠かさず見たのは木下恵介の作品群。『二十四の瞳』や名も無い灯台守夫婦の生涯を描いた『喜びも哀しみも幾歳月』のような国民的作品もあるが、日本最初の「天然色映画」の『カルメン故郷に帰る』も素晴らしく、後年、パリのホテル内の日本料理屋でフランスの青年と熱く語り合って(直前にテレビで上映)、チップを払い忘れた(本当にフランス語で? ウイ!)。他方、木下作品で妙に心に残るのは『惜春鳥』。 会津若松の5人の親友のグループのうちの一人(川津裕介)が卒業後東京に出るが、2年後帰郷する。仲間たちは喜んで彼を迎えるが、やがて彼は今では詐欺で追われる身だと知る。こうして彼らの青春は残酷な終わりを迎える。青春の美しさとはかなさを描いた作品である。


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