『東京新聞』の『本音のコラム』の定期執筆者であり在日エジプト人の師岡カリーマ氏が、 4月30日の同紙に1ページ半にわたり「戦争を避ける努力はなされたか ウクライナ侵攻に思う」と題した小文を寄せて欧米側を強く批判している(元来は岩波の月刊誌『世界』掲載論文を同誌の了解を得て短縮転載したもの)。
長い寄稿文の内容は小見出しの「『自由』対『強権』 危うい単純化」、「安全な距離から感傷と独善に陥っていないか」、「プーチンの暴挙だが.......... 西側の外交的失敗も」からも推測されよう。本文中にも、「誰が加害者で誰が被害者か、白黒のつけやすさゆえに世界は自ら考えるという労を要さない安易な勧善懲悪の悦に浸かりすぎてはいないか」「気がつくと、いつもは大国同士の利害をめぐる複雑な対立構造を紐解いてみせるジャーナリズムがなりをひそめ」「NATOの東方拡大問題、プーチンの世界観と心理状態と計算、それらを把握しているはずなのに採られなかった戦争回避策」などなど。私はカリーマの主張に全面的に賛成ではないが、同感できるところはある。
なぜ彼女は西側諸国批をこれほど厳しく批判するのか。 以下は私の推測だが、チュニジアに始まった「アラブの春」は結局はアラブ諸国を混乱に陥れた。混乱を免れたのはモロッコやヨルダンといった君主制諸国だった(それぞれが問題を抱えつつも)。カリーマの祖国エジプトも穏健な軍人独裁者に代わったのは偏狭な宗教独裁だった(人口の1割を占めるコプト教徒にとっては災厄でしかなかった)。ヨーロッパにもかつて「啓蒙専制君主」たちが並び立った時代があった。 それを忘れて西側諸国が一足飛びに専制批判を押し付けても良い結果は生まれないをカリーマは「アラブの春」の失敗から学んだのではないか。
訂正 前回の「イールド・フランス」は「イール・ド・フランス」が正しい。
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