浅間山荘事件50年をきっかけに新左翼への論評や回顧談が各紙に掲載されている。それぞれに興味深いが、まとまった紹介としては、池上彰・佐藤優の共著『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960ー1972』(講談社現代新書 2021)が最上の解説書ではないか。著者たちの前著『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945ー1960』(同新書 2021)が戦後左翼の代表だった社会党と共産党を中心に書かれているのに対し、今回は両党にも言及するが副題通り新左翼運動の盛衰が叙述の中心となっている。
すでに社会人となり報道で限られた事実を追うしかなかった私は、当時大学生だった著者たちに教えられること多大だった。大学を支配階級の下僕の養成期間と規定し、学生である自分を「自己否定」した新左翼の学生運動にいっとき多くの学生が心惹かれたことは理解できるし、彼らの大学と大学人糾弾には当たっている点も少なくなかった。しかし、左翼的言辞の深みにはまり他派を敵と見做して学生同士が殺し合う「内ゲバ」に至る。山岳アジトでの連合赤軍の同志リンチ殺人は私を含めて日本人を驚愕させたが、その頃大学構内で対立セクトに見つかった学生活動家が何人も虐殺された事実は本書で初めて知った。本人たちは真剣なのだから運動の「堕落」と呼ぶのははばかられるが、大学のキャンパスが安全で無くなっていたとは...........。
「日本人を『総ノンポリ』にした新左翼運動」との本書中の小見出しに反論できる人はいるだろうか? その負の影響の巨大さには圧倒される。
訂正 文中の養成期間は養成機関の誤り。悪しからず。