2020年10月8日木曜日

日本学術会議のあり方

日本学術会議と菅内閣の間で会員任命をめぐって対立があり、数日を経た現在も収まっていない。巷間の噂では『朝日』『毎日』『東京』各紙が政府批判派、『読売』『産経』『日経』が決定黙認派とのこと。ところが昨日あたりから大西隆前々会長当時から政府の口出しが始まっていたことが判明し、『読売』なども大きく扱うようになった。

今回政府が任命拒否をした6名のうち、加藤陽子氏 ( 日本現代史 ) と宇野重規氏 ( 政治学 ) の両氏については私も研究者として敬意を抱いている ( 他の4名は判断不能 ) 。したがって「総合的、俯瞰的」といった漠然とした反対理由 ( もっとも元来は2003年の報告書中の用語とのこと ) ではなく、より明快な理由が示されるべきである。

戦後すぐ発足した日本学術会議では会員は選挙で選ばれていた。そのせいか、私の専門の歴史学では学問的業績よりも政治的活動に熱心な人が選ばれたりしたようだ。そのためある時点から各分野の学会が選ぶように変更され、さらに現会員が次期委員を推薦するようになったとのこと。現会長がノーベル賞受賞者の梶田隆章氏であることには大方の信頼が寄せられるのでは。

しかし発足時の時代の空気を反映してか会議は軍事目的の技術研究に反対し、最近そのため不満者の脱退騒ぎもあったと記憶する。しかし当時は国民感情に合致していただろうが、現在では自衛隊は法律的にも認められ、国民の支持も厚い。それに対し学術的協力をしてはならないというなら、むしろ学問研究の自由への制限ではなかろうか。

戦争といっても侵略戦争もあればそれに対する防衛戦争もある。ナチスドイツ軍と戦って死んだ英米仏ソの兵士たちは犬死したのではない。これら諸国の学者たちもその学識や語学力を活かして情報分野などで貢献した人は少なくないはず。私が学んだ英国のカレッジの学長は大戦中、ドイツ占領軍へのユーゴスラビアの地下抵抗運動との連絡のため落下傘で潜入した。平和は願うだけで手に入るとは限らないのでは........。

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