2020年9月1日火曜日

レバノンの爆発事故


先日、レバノンの首都ベイルートの倉庫に保管中の爆薬の原料がずさんな管理により爆発し、死者三百名以上、負傷者数千名の大惨事となった。人的被害もさることながら、中東のパリと称されたベイルートの街は大きな被害をこうむった。

東京新聞の『本音のコラム』( 8月29日 ) に師岡カリーマ氏が、「父さんがついているよ」と題する小文を書いている。タイトルは事故の2日後に以前の植民地( 委任統治領 ) の母国のフランスのマクロン大統領が来訪し、レバノン国民への同情と支援を表明した態度がまるで父親のような上から目線だったと評したもの。

しかし、カリーマが本当に訴えたかったのはむしろコラムの後半だろう。マクロン発言はレバノン人に「お前たちに自治は無理と言われたようなものだが、無能と縁故主義と私欲がはびこる自国の『指導者』たちに辟易していた国民の一部からは歓迎された」ばかりか、「委任統治復活を求める嘆願に数万人が署名した」とのこと。レバノン人だけでなく、「『欧州列強に占領されていた方がまだまし』と皮肉を言うアラブ人は結構いる」と書く。それほど彼らの絶望は深いのだろう。

古代ギリシア以前から繁栄し、ヨーロッパのアルファベットの元となった古代フェニキア文字の母国にしてしかり。まして1950年代から60年代の植民地独立の時流に乗って独立を果たした途上国の中にはその後も部族対立や宗教対立を克服できず、混迷している国は多い。西欧諸国が数百年かけて克服したそうした対立を数十年で克服することが容易でないことは察しがつく。同じ新興独立国と言ってもそれぞれの国民の苦悩はさまざまである。

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