30年前、西欧的自由民主主義の勝利は万全と思われたが、今日その楽観は過去のものとなった。昨日の各紙でも旧東ドイツ国民の失望と、ハンガリーやポーランドを始めとする旧東欧諸国の排他的ナショナリズムの高揚が大きなテーマとなっていた。
「隣の芝は青い」と言うべきか、東欧諸国民の西欧の自由民主主義への過度の評価がいずれ失望に変わるのは避けられなかった。旧東ドイツ人はいま自分たちを2級市民と感じているという。しかし、治安警察 ( シュタージ ) による市民の監視や市民間の密告は廃止されたし、当時はバナナも容易に買えなかった旧東ドイツ人の収入は現在、西ドイツ人の約8割程度とのこと。愛嬌はあるが性能は最低だった国民車トラバント ( 色とりどりで旅行者の目を楽しませてくれたが ) を入手するのに何年も待たされた時代を忘れるべきではない。旧東欧諸国の国民もソ連に命令されていた時代へのノスタルジアなど露ほども持ち合わせないだろう。
旧東欧諸国による国境の壁の建設を不寛容と決めつけるのはたやすいが、何分にも予想もつかない多人数の流入だったし、難民と経済移民を区別するのが人道に反するとは必ずしも言えない。人種も宗教も異なる人たちを多数受け入れた経験はわが国にはない。陸続きの国境を持たないわが国とは不安感に大きな違いがあっても不思議ではない。
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