2019年2月28日木曜日

天皇陛下への衆院の「 賀詞 」議決

2日にわたり、平成30年間に活躍した各界の功労者が両陛下に「宮中茶会」に招待され、テレビ画面を賑ぎあわせた。連日かれらのお相手をされた両陛下にはご苦労様と申し上げたい。

それに比べて新聞各紙で地味な扱いだったが、衆議院で天皇在位30年に対して感謝と慶祝の意を示す「賀詞」が共産党を除く全党派の賛成を得て議決された。同党の反対理由は「過度に天皇を礼賛するもので、国民主権の原則に照らして賛成できない」というものである。

最も詳しい記事を載せた『産経 』で「賀詞」の原文を読む限り確かに礼賛一方だが、30年間の両陛下の行動に照らせば「過度の礼賛」とまで言えるかどうか。共産党の主張は国民一般の受け取り方に反するかもしれない。

しかし私は、日本共産党がときに示す独善的単独行動に賛成するものではないが、今回に限って言えば同党の反対 ( 欠席 )で「全会一致」とならなかったことは良かったと思う。少なくとも皇室に対しては批判を控える風潮がメディアを中心に社会に無いとは言い切れない以上、今回反対意見が明示されたことは我が国の民主主義が健在であることを世界に示したと思う。皇室問題であれ、ジェンダー問題であれ、民族差別の問題であれ、冷静な意見表明までタブーとするのは極めて危険な風潮である。

2019年2月25日月曜日

鉄道車両製造能力の国際比較から

昨日の朝日新聞の第一面トップは「中国製地下鉄  米を監視?」「『首都の機密守れ』 入札延期」というもので、驚くべき記事だった。米国の首都ワシントンの地下鉄にボストン、シカゴに続いて中国製地下鉄車両の採用が有力視され、議会や専門家から反対の声があがっているとのこと。現在の鉄道車両は単なるハコではなく、運行上必要な各種センサーの塊であり、中国に情報コントロールを可能にするとの危惧である。

私は I T技術の素人なので、国防総省の利用者の多い地下鉄に中国製車両を採用することがどれほど危険かは皆目わからない。しかし、国防総省と無関係なボストンやシカゴの地下鉄がすでに中国製車両を導入していること、すでに「米国では旅客車両を造るメーカーは淘汰され、もうない」ことは私にとって驚くべき事実である。

もっとも、次ページの図表によると、米国の鉄道車両製造能力は、世界の中で、14.6%とあるので、中小私鉄の要求に応える製造会社はまだ存在するということだろうか?  この図表によると世界の鉄道車両製造能力のシェアは中国43.1%、日本5.9%、その他 ( ドイツのジーメンスやフランスのアルストムなど?) 36.4% 。いかに中国が急速に製造能力を向上させたかが分かる。

車両製造以上に注目すべきは粗鋼生産力で、中国49.2%、日本6.1%、その他39.9%、米国4.8%。自由貿易により、より安価な製品を優先した結果がこれである。

1960年代の中ごろ、英国が自前の原子力潜水艦の製造を計画したとき、既に使用可能な優れた鋼材を自国では生産出来なくなっていた。世界で最初に産業革命を成し遂げ自由貿易主義の母国でもあった英国がである。既に覇権国では無くなっていた英国なら兎も角、米国が同じテツを踏むならば世界の安全にとりあまりに危険である。覇権国家の無い世界は理想ではあるが、中国が米国に代わって覇権国になるのは悪夢以外の何物でも無いだろう。

2019年2月20日水曜日

親による子の虐待の防止に法律は有効か

千葉県野田市の小学四年生の女児の父親による虐待死は信じられないほどの残忍な事件で、なぜ親が実子に対しあそこまで冷酷になれたか、納得がいかないのは私だけではあるまい。しかも周囲の人たちはこの父親の性格を全く予感していなかったという。完全な二重人格者とでも解釈すべきなのか。

女児の死に至るまで、学校、教育委員会、児童相談所のそれぞれにひどい失態があったと見られる。その後、親の体罰の行使を法的に禁止する動きが国会議員団から、関係閣僚から、さらに東京都議会 ( すでに立法に着手しているとか?) にまで拡大している。

しかし私は家庭内にむやみに法律を持ち込むことには反対である。世の中に躾けというものが必要である限り、それは学校教育以前にないし併行して家庭でまずなさるべきであり、そこで体罰が全く無用だとは思わない。親による子への虐待事件が絶えないとはいえ、全国の家庭からすれば例外中の例外であり、特殊例 ( それがいかに冷酷であっても )に対処するため全ての親子関係に関わる立法をすべきだとは思えない。じじつ親の体罰禁止の法があったとしても今回の事件が防止できたとは思えない。やはり、学校と弁護士との協力、必要とあれば警察との協力をさらに強めること。そのための人員や予算をこれまで以上に充実させることが先決ではないだろうか。

2019年2月16日土曜日

名門浪商の名選手たち

夕刊に元浪華商高野球部監督の広瀬吉治氏の逝去が報じられている。最近こそ大体大浪商高は高校球界の強豪校ではなくなっていたが、戦後復活した1946年の中等野球大会で優勝して以来、四半世紀以上も甲子園の強豪校であり続けた。

名前も知らなかった広瀬氏の訃報に驚いたのは、氏が戦後第一回の中等野球大会の優勝時の捕手だったとあったから。当時は日本中が食糧難に苦しんでいた時期だったが、京都2中との決勝戦で相手打者をバッタバッタと三振に討ちとる平古場投手の活躍は素晴らしく、中学1年の私はラジオ放送に聞き入ったものだった。その時の浪商の捕手が広瀬氏とは知らなかった ( 平古場は後に慶大で活躍。プロには進まず ) 。

再び夏の甲子園で浪商が優勝した時は怪童と呼ばれた高2の尾崎行雄投手が大活躍。彼はその後高3に進まないまま東映フライヤーズに入団し、1年めの1962年、20勝9敗で新人王になった。チームメイトだった元巨人の高田外野手は尾崎の球速は最高だと評価している。

三度目の甲子園になる春のセンバツ大会では広瀬氏が監督で、牛島和彦投手と香川伸行捕手のバッテリーで勝ち上がったが、決勝戦で敗れた。牛島と香川はそれぞれ中日ドラゴンズと南海ホークスで活躍し、香川は野球マンガの主人公の「ドカベン」の愛称でファンに愛された。

平古場も尾崎も香川も鬼籍に入り、その活躍を知る人は少なくなった。そうでなくとも引退後のプロ野球選手の後半生は一部を除き話題に上らないのは寂しい限り。私は決して忘れない。


2019年2月8日金曜日

中国移民に揺れる豪州

先日 ( 1月29日 ) 放映され録画しておいたNHKのB1スペシャル「静かな侵略  中国新移民に揺れるオーストラリア 」を見た。現地の放送番組の紹介である。

オーストラリアは第二次大戦後も白豪主義 ( 白人以外の移民は歓迎しない ) を取っていたが、その後は人種差別とみられることへの反省か、各人種に門戸を開いていた。しかし最近は逆流が起こっているという。それにしても「Silent Invasion 」とは穏やかでない。

逆流を誘発したのはいまや総人口の5%を占めるという中国人の流入である。番組ではそれが顕在化した南のタスマニア島の州都?ホバートを取り上げていた。同市はこれまで世界各国が南極大陸への補給基地として利用してきた。中国は先進国との30年の遅れを挽回するため自国の南極基地を4箇所から5箇所に増やしつつあり ( 南極海に人工島を計画とも ) 、そのためもあってかホバート市議会に初めて中国人移民の候補 ( 女性 )を立てた。

最近、世界の有名大学に「 孔子学院 」が設立され、文化的侵略や中国外交の道具ではないかと警戒されているが、ホバートでは中国人の仏教寺院がその役割を担っていると見られている ( 同国では留学生も選挙権を持つ )。

中国の影響力はむろんタスマニアだけではない。オーストラリア労働党の次期党首とも目された親中派の有力議員が中国移民から資金を提供されていたことが発覚し、政界引退を余儀なくされた。タスマニアには中国資金によるゴルフ場や空港建設の計画もあり、中国人移民の候補は落選したが当人はさして落胆の様子はなかった。

ヨーロッパでも移民人口が国民の数パーセントを超えると国民の警戒心を掻き立てると聞く。移民国家オーストラリアも例外ではなかった。まして中国が国際司法機関の判決を無視する政治的軍事的大国であることが一層の警戒心を掻き立てるのは理解できる。

2019年2月6日水曜日

インバウンド客の訪問地

今朝の「羽鳥モーニングショー」で、急増する外国人観光客の訪問県のリストが紹介されていた。京都府や東京都などが最大の訪問客数を競うのはむろんだが、最近の増加率だけをとるならば青森、大分、佐賀の三県が最高だという。

意外な結果だが、それにはそれなりの理由があるという。先ず、最近の格安航空便 ( LCC ) の便数増加により地方空港の利用率が高まっているとのこと。大都市空港の便数の制約や利用料金の高さもあるのだろう。数年前まで地方空港の乱造と赤字が話題となり、私もその驥尾に付して静岡空港批判を書いた記憶がある。弁解になるが、これほどのインバウンド客の増加を予想した人は少ないのではないか?

各地の事情としては、青森県の場合、津軽のストーブ列車やスキー客の増加が指摘された。大分県は別府や湯布院といった名湯の存在が大きいのだろう (格別の言及はなかったが )。佐賀県は失礼ながらその理由が解しかねた ( 私自身、長崎への往復に通過しただけ )。番組によると中国との地理的な近さや有田焼などもさることながら、棚田など何でもない緑あふれる風景が桃源郷として人気とのこと。何しろ観光目的にきれいな空気を吸いたい ( 洗肺 ) が挙げられる中国人である!

京都のように外国人観光客のために乗り物やホテルが混むという不都合もあるが、やはり多くの外国人に日本の風物や料理 ( 最近は訪日目的の上位に急上昇とか ) や人情に接してもらいたいと思う。いっときの日本人の冬ソナ聖地巡礼のように日本映画の聖地巡りも大歓迎である。我が家の周囲もアニメ映画の名作『耳をすませば』の聖地なのだが、今のところもっぱら日本人の若者だけなのが残念である。




2019年2月3日日曜日

私が選ぶNHK大河ドラマ

昨日の朝日新聞の土曜付録beの『beランキング』は「忘れられない大河ドラマ」20篇だった。我が家はかなり熱心な大河ドラマ視聴者であり、最初の2回の「花の生涯」と「赤穂浪士」( 長谷川一夫主演 ) はさすがに見ていないが、その後は8割りかた?見ていると思う。

ランキング第1位の「篤姫」を始め20位までの作品も大部分見ているが、その中で感銘を覚えた作品は6位「八重の桜」、10位「天と地と」、12位「樅ノ木は残った」ぐらい ( 感銘度はこの逆 ) 。私が最も感銘を覚えた「獅子の時代」と「琉球の風」は20位以内に入っておらず、平賀源内を山口崇が演じた「天下御免」は日曜の大河ドラマではなかったと今回知った。

加藤剛と菅原文太主演の「獅子の時代」は1867年のパリ万博から明治17年の「秩父事件」までの激動の歴史が多く織り込まれ見どころ十分だったし、「琉球の風」の細部は忘れたが、本土の不当な圧迫に抵抗した琉球王朝時代の沖縄がテーマで、深く共感を呼ぶ作品だった。どちらの作品も時代の流れに逆らって誠実に生きた主人公たちの姿が印象深い。

12位「樅ノ木は残った」は、芝居などで従来は極悪人とされてきた仙台藩家老の原田甲斐を、身を賭して幕府から仙台藩を守った忠臣と描いた山本周五郎原作の時代劇。私は時代の趨勢にあらがった悲運の主人公に弱いようだ ( お前だけではない!?)。伊達家の定宿だった宮城県の青根温泉不忘閣の庭には原田甲斐が仰いだ樅の大木がある ( むろん山本周五郎の創作だろうが )。