旧ソ連崩壊後のロシアの混乱期には4島返還の可能性もあったろうし、大統領職に復帰したプーチンが領土問題での「ヒキワケ」を口にした頃には少なくとも2島返還の可能性はあったろう。だがそれ以後明らかに彼の態度は後退した。以前からラブロフ外相は対日譲歩を否定する発言を繰り返してきた。これ迄はそれを、妥協も視野に入れるプーチンとの役割分担とも解し得たが、仮にそうだとしても度重なる外相発言がロシア国民に4島領有を正当と錯覚させる効果を果たしたとすれば逆効果だったことになる。じじつロシアの国民世論はいよいよ頑なになってきた。
領土の返還よりもロシアに対する経済支援を優先しているプーチンの発言は、ロシア世論を対日譲歩に導く効果を狙っていると解することも不可能ではないが、彼の真意はわからないし、何よりそれでロシア世論が妥協的になるとの期待はとても持てない。安倍首相は経済支援の食い逃げを許してはならない。
多年、日露間の交渉に従事してきたクナーゼ元ロシア外務次官に、「ロシアは歯舞、色丹を引き渡す用意がないと思います」( 『朝日』1月24日 )と言われては期待は持てない。経済支援の先行を許さない結果、2島返還が実現しなくても止むを得ない。漁業域 ( EEZ )の拡大を考慮しても2島返還にそれほどのメリットは感じられない。米国のシェールガス実用化により日露協力による資源確保のメリットもかつてほどではなくなった。
多大の流血を経ても兎も角も沖縄、小笠原を返還した米国の態度と比較したくもなる。それを知らしめたなら安倍首相の奔走もそれなりの意味はあったのだろう。意図とは違うとはいえ。
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