2018年11月16日金曜日

理性と感情の相克

安倍首相とプーチン露大統領の会談で、日露平和条約締結交渉は1956年の日ソ共同宣言 ( 歯舞と色丹の2島返還を認めた ) を基礎とすることで両者が合意した。安倍首相は北方4島の返還というわが国の多年の主張を実質断念したとみられる。

今日ほぼ出そろった新聞各紙の主張は大きく分かれている。日ごろ安倍内閣を擁護する『産経』が「 日本が追求すべきは、不法占拠された4島の返還であり、空疎な「平和条約」ではない」と譲歩に絶対反対なのに対し、日ごろ安倍内閣に極めて厳しい『東京』は「最後の好機を逃すな」との見出しで「トップ交渉23回、この積み重ねが水泡に帰するのはあまりに惜しい」と、心ならずも?安倍擁護と取れる主張である。

三大日刊紙では『毎日』が、「共同活動が行き詰まった」以上、「56年宣言に立ち戻るのは止むを得ないだろう」と消極的でも支持なのに対し、「拙速な転換は禍根を残す」との『朝日』は『産経』に近い。「国民が納得できる説明をするのは当然の責務だ」( 同紙 ) は自社の判断を示さず国民に責任転嫁していると読める。『読売』の「国民にかなう決着を目指せ」も同工異曲である。「国民にかなう」のはどちかは言わない。両紙とも巨大メディアのズルさと言うべきだろう。

私自身は理性的には「最後の好機を逃すな」との『東京』に傾くが、感情的には北方領土の7%でしかない2島返還での妥協は面白くない ( ロシアには大国の器量はないのか!)。「( 2島返還に ) 安倍首相がこだわるのは自分の実績にしたいから」( 岩下明祐九大教授  『朝日』)を頭から否定はしないが( 吉田茂、田中角栄に並びたい?) 、国民の支持も見込めず右翼の猛反発が予想される ( テロすらあり得る ) 決断をこれまで誰も避けてきたことも考慮して良いのではないか。



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