2017年12月24日日曜日

「シェール革命」のもたらすもの

今日の読売新聞に、「『シェール革命』地政学激変」との見出しの米国の著名な政治学者ジョセフ・ナイの論文が2ページにわたって載っており、米国におけるシェールオイルやシェールガスの生産が中東諸国との勢力バランスを同国に有利に変えつつあると説いている。ナイはトランプの米国大使館のエルサレム移転決定に直接には言及していないが、シェール革命が米国の自信を回復させたことを強調し、それが「地政学( の) 激変」をもたらしたと説いているのである。

これまで米国を含めて世界中が中東の石油に大きく依存しており、中東諸国の政治が腐敗しておろうが女性の人権が無視されていようが内政には口を挟まなかった ( 挟めなかった )。それどころかアラブ民族の統一による原油価格決定力の上昇を恐れてその政治的分立を助長してきたとさえ言えよう。しかし、「このシェールブームは米国をエネルギー輸入国から輸出国の座に押し上げた」「要するにエネルギー地政学における地殻変動が起きているのだ」とナイは説く。

今後も中東における政治動乱で原油価格の上昇が起こることはあろう。しかし、ナイによれば「シェール開発では井戸は小規模かつ安価で、価格の変動に応じて開くのも閉めるのも簡単」である。つまり米国は石油の価格決定力をある程度中東から取り戻したのである。

トランプ氏の米国大使館のエルサレムへの移転決定は第一には彼自身の国内評価の向上を狙ったものだろう。しかし石油をめぐるこの地政学的変動がトランプとその背後の米国を大胆にしたことは十分考えられる。中東原油への依存度が極めて高い我が国にとって米国の価格決定力の強化は望ましいが、同時にそれが中東諸国の遅れた政治の近代化を促すよう国際協力に努めるべきだろう。

P.S.  前回、「国境線の交代」としたのは「国境線の後退」の誤りです。単純なミス!

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