花火大会は夏に限られないだろうが、最近もテレビでどこかの花火大会を紹介していた。わが多摩市でも半世紀近く前には多摩川の河原で花火大会が催されたが、数年で消滅した。現在では我が家からは立川の花火大会が見れるが、当然小さくしか見れない(それでも音は聞こえる)。
芥川龍之介の短篇小説に『舞踏会』がある。若き日に鹿鳴館の舞踏会でフランス海軍の士官と花火を見た思い出を老婦人が青年小説家に語るというのが大筋だが、フランス人士官の名前を聞いた小説家がそれは別名で、のちに『お菊さん』を書いたピエール・ロテイだと気づきそう告げると、老婦人は頑固に否定する。なんとも一場の夢のような美しい作品で、江藤淳氏や三島由紀夫に高く評価されているとか。
私宅の近所に歯科医の資格を持ちながらそれを職業にせず、地区の世話役をしながら芥川文学を熱愛し、研究書を一冊著した人がいた。私も芥川文学は好きなので発売後すぐに買った。その後、伊藤整の『日本文壇史』に自著が言及されたとの報告を聞き大いに祝福してあげたが、残念なことにその後間も無く亡くなり、自宅は「何とか企画」という名の事務所になっている。それでも芥川文学の研究者として名前を残した事は本懐に違いない。
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