2024年12月24日火曜日

教員の離職増加の真の原因?らや

  年若い教員の早期休退職の増加に関して私が前回のブログを書いた前日、書店で岩波新書の池上彰編『先生!』を見かけて購入した。新刊かと思ったら11年前の旧書の増刊だったが、最も目につきやすい場所に平積みしてあったので、やはり現下の重要問題の一つと判断されてそうなったのだろう。前回のブログの執筆時には27篇のうち数篇しか目を通しておらず、どちらかというと強烈な個性と行動の先生たち(大半は男性)に習った生徒たちの回想。それはそれで立派だが、誰にでも出来ることではないと考えた。

 その後全編に目を通したら、もっと多様な報告集だった。その中に私が上手く表現できなかった(モンスターペアレンツの代表が女性であるかのような誤解を与えかねなかった表現)思いを強烈な文章にした一編があった。筆者の武富健治氏は漫画家で、映画化された『鈴木先生』の原作者。「消費者的に」学校教育をあれこれ論ずることに反対する。以下、一部引用。

 「保護者の方々も「わが子を守る」と息巻いて教師や学校をあからさまに批判し、街頭で、あるいは家のパソコンなどを前にして、実際には子を持たない人間までも、当然その権利があるかのように「がっかり」感をあらわにして、好き放題に「現代日本の学校教育」をこきおろす。そうしたノイズを「聞くべき貴重な声」として番組なども好意的に紹介する。」私が「そんな中で辛かったこととして覚えているのは、いけないことをした生徒をなんで先生はちゃんときつく叱らないのだろう?ということでした」。「今、先生や学校ばかりが叱られて、学校教育に対して好き勝手を言っている人たちはなぜ叱られずに済んでいるんだろう、と悔しく思っているのです」。

2024年12月22日日曜日

教師の受難時代ほの

 昨日今日の新聞各紙に初等中等教育に従事する教員に精神を病み退職や休職する者が増加しているとの調査記事が載っている。心痛む由々しい事態である。メディアによればその理由は本務の授業以外の仕事時間の増加、いわゆるモンスターペアレンツへの対応の困難、低い給与ないし不合理な給与体系など。

 半世紀以上も前の3年間程度の実体験では理解できないことが多い。給与水準の低さはその通りだろうが、昔も他の職業に就いた同級生ほどの給料ではなかった。それでも当時の「モーレツ社員」の働きぶりを知れば羨ましくはなかった。

 二十年ほど前だろうか。「学級崩壊」という事態が問題化したことを記憶している人は少なくないはず。その原因に関しては諸説あろうが、私は生徒の権利といったことがむやみに唱えられたことと全く無関係ではないと感じている。戦前戦中のように教師が生徒たちを2列に並ばせてビンタさせ合うなどといった野蛮なことはあってはならないが、生徒を大人と全く同様に遇するわけにもいかないと思う。

 最新のモンスターペアレンツの問題は私は父兄とりわけ母親の学歴が教員並みに向上したことと無関係ではないかとも思う。私が児童だった頃の母親たちは中等教育(旧制の高等女学校)の卒業者は少数派だったと思う(田舎では間違いなく)。ところが現代では教師と生徒の母親とはどちらも大卒が普通だろう(とくに都会では)。弁の立つ人も多かろう。生徒の母の担任批判を生徒が家庭で耳にすることもあろう。ここで校長ら管理職がモンスターペアレンツに毅然とした対応をしてくれれば良いのだが、教育委員会を含めて事なかれ的に対応されたら教師の心も折れてしまうだろう。幸い企業や役所がモンスターカスタマー対策を立てる方向にあるようだ。教育界もしっかりして貰いたい。

 追伸 前回のブログに松本清張のそば好きに関連した記事に言及したが、この記事は「多摩版」掲載で、全国版ではありませんでした。悪しからず。

2024年12月12日木曜日

シリアのアサド独裁の後は?

  シリアのアサド独裁政権がカルタの城のようにあえなく崩壊した。親子2代にわたる体制が崩壊したのは大いに慶賀すべき事件だし、ロシアの支援を受けていた政権の崩壊はウクライナ戦争中のロシアにとって面目失墜となる点で大いに喜ばしい(私はNATO諸国やウクライナが一方的にロシアを悪者にしていることには賛成できないが、世界戦争に発展しかねない戦争の終結のためには両国の疲弊を望む)。

 他方、内外のメディアも成功した反乱軍がテロ組織を含む(むしろ彼らが主体?)であることを指摘しており、一方的な民主派の勝利と見做していないのは正しい。それで思い出すのはリビアのカダフィ政権の崩壊である。「アラブの春」の影響下の民衆反乱でカダフィ独裁が打倒された時、私は心から祝福した。しかし、その後の同国は相争う二つの地域に分裂していると聞く。一つの独裁の打倒が国家の分裂と対立を生むならば喜べない。同じ結末はスーダンを始めとする一部のアフリカ諸国の宿痾となっているようだ。数十年間の独裁を経験したシリア国民が同じ過ちを犯さぬよう祈るばかりである。

 追記 今朝の朝日新聞に松本清張のそば好きに関連した記事があり、その中で清張の能登金剛の歌碑が言及されている。しかし、私もこのブログで引用した作中の冬の日本海の風景の「かなし」が「恋し」と誤記されている。そうした引用も絶無ではないらしいが、歌碑の写真が「かなし」なので誤りである。私も10年にもなるこのブログでいくつかの間違いを犯しているに違いないが、念のため。

2024年12月8日日曜日

韓国の戒厳令騒ぎ

  韓国の尹大統領による戒厳令騒ぎは「初めは脱兎の如く」始まったが、2日間で一応の終止符が打たれた。解決までには未だ曲折が有りそうだが。

 同国では軍政にさよならした後でも朴槿恵大統領と武鉉費?大統領と二度の大統領罷免騒ぎがあった。日本や英国の民主制と異なり、大統領と議会が相互に無関係に選ばれるという制度的な問題もあるようだが、与野党間の対立の激しさは日本とは違うし、まして与党と陛下の反対党(her or his majesty’s  loyal opposition)が争う英国の国政とは大違いである。

 韓国のそうした与野党対立の激しさの原因にはもう一つ北朝鮮の存在があると私は見ている。現在の野党(共に民主党)の李在明代表は「北朝鮮への不正送金に関わったことも指摘される」(「東京新聞」12月8日)。北が韓国の政治の混乱を目指すのは不思議でないが、韓国の野党勢力は政権党の弱体化のため時に北の別働隊の役を演じる。済州島事件以来の「韓国の民主化運動」には金大中氏のような純粋な人ばかりではないと私は考えている。

2024年12月3日火曜日

PFOAについての報道

 最近各地で健康への被害の恐れが問題となっているPFAS(有機化合物)についてNHKスペシアル『追跡PFOA汚染』を見た(PFOAはPFASの中でも最も危険視される種) 。                                          最初にPFAS残留への危惧がメディアに取り上げられたのは各地の米軍基地でのアワ消火剤としての使用の影響ということだった。東京では横田基地の水系にある国分寺市などが影響を受ける代表で、我が多摩市は多摩川を隔てているので安心だろうと内心ホットしていた。ところが最近の調査では日本の各地の井戸などでPFASが混入していることが分かってきた。実はPFASは消火剤としてだけでなく、フライパン、防水服、半導体などで泡活性剤として使用されていたのである。

 番組は代表的な使用企業としてエアコンの大手製造企業の「ダイキン」を取り上げていた。米国では2000年ごろから一部企業で対策が取られ始めていたのに、ダイキンをはじめとする日本の企業と地方自治体はPFASの健康被害が確実とまでは言えないことを理由に今日まで対策を怠っていたという。被害がまだ確実ではない段階で使用中止したくないことは企業として理解できないではないが、自治体まで口をつぐんでいたとは.............。

 NHKはメディアの中では企業や政府の問題点を先頭きって指摘するほうではないとの印象も無いでもなかったが、今回は他局に先駆けて問題提起したのは評価すべきだろう。

毛沢東の功と罪

 昨12月2日夜、NHKテレビの「映像の世紀」で「毛沢東の革命と独裁」を見た。人物の評価とくに政治家の評価は浮き沈みが避けられないが、毛沢東ほど今に至るもその評価が本国で極端に変動する例も稀ではないか。延安の洞窟住居から天安門の壇上への彼の生涯の前半は英雄の生涯と見るのが戦後の一時期までの評価であり、スターリン独裁の暴露でソ連共産主義の理想視から解放された世界の左翼勢力にとっては新たな崇拝の対象となった。フランスの五月革命も我が国の大学紛争も毛沢東思想(造反有理)の理想視と無関係ではなかったろう。革命思想のレベルでも労働者階級を革命の担い手とするマルクス・レーニン主義に代わって毛沢東の「農村から都市を包囲する」思想は左翼の人々の心をつかんだ。日本でも中国革命の成功に影響され、共産党が「山村工作隊」を組織したが、彼我の地理的社会的条件は違いすぎたようだ。

 今回の番組の新しさは毛沢東を崇拝する青年李鋭がやがて毛沢東の秘書を務めたのち、大躍進政策や文化革命に批判的になり苦難の後半生を記録した大部の日記をスタンフォード大学に託し、それに部分的に基づいている点にもある。いま現在も習近平による再度の毛沢東神格化が進んでいる。言論の自由を欠く限り歴史は繰り返すといことだろう。

追記 最近、安全重視のためか、ブログの開始面を呼び出す手間が複雑になり、手を焼いている。今後「もぐらのたわごと」が中断したりしても、当方の健康不全が理由ではありません。悪しからず。