2024年8月24日土曜日

農協職員から学者知事へ 蒲島郁夫氏の見事な人生

 今朝の『朝日新聞』で14回にわたり続いた前熊本県知事の蒲島郁夫氏の自伝?が終わった。地方政治家執筆のものとしては異例の扱いであり、また、そうした扱いに値する企画だと思う。

 樺島氏は高校卒業後に熊本県の農協の職員に採用された。牧場を持つことが将来の夢だったが、その後、派米農業研修生に選ばれ大学で農学を、ついで大学院で政治学を学ばれた。帰国後は筑波大教授ついで東京大学教授となり、さらに郷土の熊本県知事を14年間務めた。私は以前から同氏に注目していたが、今回の自伝を読みあらためて尊敬の念を深めた。

 唯一不満があったのは熊本県の人吉盆地を流れる川辺川のダム建設を中止させ、2020年の同地の水害の誘因をつくったこと。民主党を中心とする連合政権が「コンクリートから人へ」のスローガンのもと無駄な公共事業にストップをかけた際に、川辺川ダムと群馬県の八ッ場ダムがともに何十年にもなる反対運動が目的を達して計画廃止となった。

 しかし、2020年の人吉市の水害で川辺川ダムは建設再開となった(八ッ場ダムはそれより早く)。「コンクリートから人へ」のスローガンは一般論として誤りだとは思わないが、過去に何回も水害を起こしている川辺川の場合、中止は妥当ではなかった。今回の自伝がわずか数行の弁明で済ませているのはどんなものか?

 それはともかく蒲島氏の人生はやはり見事という他ない。当時とは時代が違うとは言え、家庭的に必ずしも恵まれていない若者へのこの上ない励ましではなかろうか。

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