2023年12月26日火曜日

米軍普天間基地移転問題

 宜野湾市の米軍普天間基地の名護市辺野古への移転をめぐる沖縄県と日本政府の対立は最終局面に至ったようだ。26年前、発展の遅れた県北部の振興をめざす比嘉鉄也名護市長の苦渋の決断で基地移転が決まり、市長との会談で橋本首相は涙ながらに感謝したと聞く。 むろん沖縄県全体では県内移転に強い不満があったが。

 その後の26年間に沖縄の世論の強い反対と同時に海面埋め立ての困難がクローズアップされた。現在の予想では7万本の杭が必要で、工事に12年必要とのこと(それさえ確実ではない)。その上、2本の滑走路はどちらも全長1800メートルで、普天間基地の2700メートルの代替物となるのか疑わしい。さらにミサイルの絶え間ない進歩で基地の後方移転の動きまであるとも聞く。

 ここまで状況が変化した以上、もはや辺野古移転は断念すべきではなかろうか。普天間基地には騒音や危険があるとはいえ、それが耐え難い市民には国が新築移転の全費用を負担するのである。12年後でも辺野古移転が可能かは確かでない以上、もはや決断の時ではなかろうか。

2023年12月22日金曜日

「皇室の危機」を作った安倍首相

 今朝の毎日新聞は一つ一つは短いが、3ページにわたって「皇室 深まる危機」との記事を載せている。きっかけは最近大衆週刊誌で秋篠宮の住居の改築工事が広大でゼイタクだと批判されている報道のようだ。批判に対して秋篠宮は広いのは公的スペースが多いためであり、佳子様の部屋が無いのはどうせいつかは家を出るから不要になるとの理由を挙げられる。 立派な反論になっている。

 最近の大衆週刊誌の秋篠宮関係の取り上げ方は、題名から判断する限り民間人なら名誉毀損に該当するのではないかと思うほどに下品であり、改築内容の説明が必要と秋篠宮に感じさせたとは宮に同情したくなる。しかし、『毎日』の危惧は天皇家の「進む高齢化」である。私見ではそれを一挙に解決できるのは女性天皇の誕生である。愛子さんの人格や能力が天皇にふさはしくないとは誰も思うまい。

 平成天皇ご退位直後には皇室典範の改正には女性天皇創設も審議の対象と考えられていた筈。それが変化したのは秋篠宮家での男子誕生である。しかし、男子誕生なら問題がすべて解決ということでは無かった筈。それなのに皇室典範の改正論議が進まなかったのは、延期による論議の自然消滅を狙った安倍氏の策略では無かったか。その結果、「皇室の危機」が生まれたのだから安倍前首相の責任は重大ではなかろうか。

2023年12月13日水曜日

オーバーツーリズムの功罪

 コロナ禍で一時沈静化していた外国人の日本観光熱が復活し、観光地はどこも潤って喜んでいると思いきや、「過ぎたるは及ばざるが如し」で京都など迷惑しているとは聞いていた。今朝の朝日新聞の「声」欄に京都と共に信州馬籠、箱根、秋田、瀬戸内からの地元住民の困惑の声が寄せられている(京都は悲鳴!)。黒田前総裁のもと、日銀が採った低金利政策による円安の影響も大きいが、それだけなら今後の円高誘導で沈静化するだろうが、もっと本質的な日本の風土や文化への憧れが外国人を呼び寄せているとすれば、痛し痒しである。

 その外人観光客の人気ナンバーワンの京都が日米戦争の末期に米空軍の爆撃目標だったことは知られており、それを阻止するため尽力したのは米国の美術史家のラングドン・ウォーナーと当初は伝えられた。米国では早く異論が出たようだが、我が国ではライシャワー大使の回想録『ライシャワー自伝』(1987)が、それは誤りであり日本文化を愛し京都を二度お訪れていたスチムソン陸軍長官が恩人だと知らせた。いずれにせよ、戦争がいかに人の心を狂わせるか痛感させられる。現在のオーバーツーリズムが各地に困難を生んでいることは困ったことだが、日本文化がそれにより広く世界に知られることの利点ははかり知れない。

2023年12月10日日曜日

ガザの真実はどちら?

   発売されたばかりの月刊『文藝春秋』の新年特大号に佐藤優と池上彰の対談「ハマスとイスラエル 悪魔はどちらか」が載っており、さっそく図書館で読んだ(多摩市の読者第一号?)。 最初に池上が、共著もある佐藤優とはこれまで共鳴するテーマが多かったが、今回はそうでもないと読者に予防線を張っていた。しかし内容はそうでも無かった

 池上はまず、イスラエル側は自国民の犠牲者数を最初は1400人と発表し、ついで1200人と訂正した(だから信用できるといいたい?)のに対し、 その十倍ほどのガザ側の犠牲者数は「ガザ保険省の発表」ではなく、「ハマスの発表」だと読者に注意する(だからそのまま信用はできないとでも?)。

 また、池上がハマスの幹部はカタールで「セレブ生活」をおくるといえば佐藤優がその子供はインターナショナル・スクールに通学すると応ずる。さらに池上は「今のハマス幹部はかなり腐敗し」「恐怖政治をおこなっている」とまで語る(初期のハマス幹部は清廉だったとも強調)。他方、イスラエルの「内在的論理」を追求するとの佐藤は逆に「1997年のネタニヤフ」と「2023年のネタニヤフ」は「同一人物とはとても思えません」とイスラエル首相の変貌を指摘する。しかし、「近隣のイスラム諸国でスンニ派のハマスを支持しているのはシーア派のイランだけ」。「ハマス掃討はイラン以外は皆賛成」と断言する。

 以上、細かい事実など私には判断できない。しかし「日本の報道の多くは情緒的すぎ」との佐藤の指摘は私も全く同感である。他方、イスラム研究者の飯山陽に親アラブと批判された(『イスラム教再考』扶桑新書 2021) 池上もハマスは別だと言いたいのだろうか?

  1930年代にフランス最初のユダヤ人の首相となったレオン・ブルムは「キリストは隣人愛を説いたが、エホバは正義を望んだ」と語った(エホバ=ヤーヴェは旧約聖書の神)。ユダヤ人もアラブ人も砂漠の神の峻烈さを分かち持つということなのか。

 

2023年12月7日木曜日

政治家の評価

  毎年のことで今年だけではないが、脊梁山脈を挟んでわが国の太平洋側と日本海側の気候の違い、その不公平さには心が痛む。今年も太平洋側は好天続きだったのに(農業などには良い事ばかりではないが)、日本海側は災害をもたらす天候不順の日が少なく無かった。これからの冬にはその不公平は極大化する。

 今月4日のNHKの「映像の世紀」は、『田中角栄 列島改造の夢と転落』だった。新潟県の子ども7人の農家に生まれて十分な学歴の無い少年が、文字通り刻苦勉励して首相になる物語は周知の通りだが、政治家としてのその出発点が群馬県と新潟県を分つ三国峠を切り開く(のちに道路トンネルとして実現)であり、その延長が『日本列島改造論』だった。

 今太閤とまで囃されたその人気は「オイルショック」に起因する「狂乱物価」で急降下し、さらに「ロッキード疑惑」などの「金脈問題」で地に落ちた。しかし、東京をはじめとする太平洋側の大都市の側の評価が正しいかという私の疑問は消えない。

2023年12月5日火曜日

最近の女の子の名前

  最近の女の子の名前(姓ではない)に子が使われなくなったことは無論知っている。しかし、今朝の朝日新聞に23年生まれの名前のランキングが載っており、14位までに子のつく名前がゼロとは.............。今更ながら隔世の感がある。

 私は二十数年前に卒業式で卒業者の名前を読み上げる担当者となったことがある。誤読は絶対にあってはならないので、間違え易い名前には事務方が振り仮名を付けてくれていたが、全体で1割以下だったと記憶している。ところが今回の14名のうち私には9名の名前の読み方の見当がつかなかった。生徒の親には式典で係が読み易くする義理は無いかもしれない。それでも独りよがりが極まったとは感ずる。

 独りよがりか否かは別にしてこの変化がわずか二十年余りの間に惹起した変化であることも驚きである。九十年も生きてくると二十年などこの間のように感ずる。もっともこの感覚は経験してみないと持てないだろうが。平凡だが、光陰矢のごとしということか。