2023年10月28日土曜日

「減税 VS給付」論争に意味はあるか?

  現在開会中の国会、 与野党の意見対立点はいろいろあろうが、現在のところは最近の経済情勢で生じた余剰金を減税で国民に還元するか、給付金で還元するかが問題となっているようだ。両者の違い、得失はその人の経済的位置により異なるだろうし、経済に疎い私はどちらかに軍配を挙げたくない。

 しかし与野党とも、世界の先進国で最悪と言われる借金大国の日本は余剰金を国民に還元することよりも予算の赤字を大量の国債発行で糊塗している現状を改めようと提案しないのは不思議である。

 国家財政と家計は同一の尺度で計れないだろうし、先進諸国の高いインフレ率を考えると現在の我が国の経済は比較すれば良い方なのだろう。しかし、数年前の価値がほぼ半減した円のおかげで輸出産業や観光業が活況を呈しても、国債による赤字補填を続けていって良いとも思えない。議会民主主義に健全財政を求めることの困難は避け難いのか?  

2023年10月22日日曜日

パレスチナに二国家共存は夢か

  ガザ地区をめぐるハマスとイスラエルの対立抗争は一向に沈静化しない。イスラエルにより封鎖されたガサにようやく20台の物資補給のトラックが入境したが、無いよりまし程度の量。 メディアは当然にガザ住民の窮状を連日伝えるが、問題解決は遥かに遠い。

 ハマスは200人とも言われる人質のうちの2人の米国人を解放したが、問題解決のためのそれ以上の人質解放を拒んでいる。今回の衝突の一半の目的が人質獲得にあった以上当然かもしれないが(軍事力で勝つ可能性はないので)。

 国際連盟下にパレスチナを委任統治した英国政府はアラブ人の反感を恐れてシオニズムによるユダヤ人の帰国を歓迎しなかった。第二次世界大戦後も1947年のイスラエル建国までは変わらなかったのでユダヤ人の反英運動はアメリカ映画『栄光への脱出(原題はエクソダス)』に描かれたように英軍施設の爆破にまで及んだ(ただし直前に予告)。

今朝の朝日新聞に珍しく襲われた側のイスラエルのキブツの惨状が紹介されている。半世紀前に成員の平等を基とする共同体としてある種理想社会のように受け取られていたが.............。

 問題の解決は絶望的のようだが、アラブ諸国も大半はパレスチナでの二国家共存を認めているのだし、イスラエルがガザ侵攻を断念し、ハマスが人質を全員解放することから出発する他はあるまい。

2023年10月17日火曜日

谷村新司を忘れない

 シンガー・ソングライターの谷村新司があの世に旅立った。芸能人を呼び捨てにしても許されるだろうが、私などが呼び捨てにする相手ではないとも思う。

 といっても私は彼のファンと言えるのか? 今朝の朝日新聞に彼の代表作?10曲が挙げられているが、私が知っているのは『冬の稲妻』『いい日旅立ち』『昴』『群青』ぐらい。検索してみたら彼が作詞や作曲した歌は大変な数にのぼるようだ。しかし、作曲数だけが問題ならば戦前からの古関裕而や古賀政男に及ばないだろうし、戦後でももっと作品数が多い人はいるのではないか。それでも『いい日旅立ち』は、さだまさし作の『秋桜』と並んで山口百恵の声とともに忘れられない。

 しかし、私は『群青』を忘れてほしくない。東宝映画の『連合艦隊』のテーマ曲だったと聞くが、太平洋戦争で海に散った海軍将兵の親の悲しみを歌って胸に突き刺さる。前大戦の犠牲者への鎮魂歌は『長崎の鐘』が代表だろうが、『群青』もそれに匹敵する、いやそれ以上の鎮魂歌だと私は思う。ぜひ多くの人に知られてほしい。

2023年10月13日金曜日

気になる表現あれこれ

  このごろテレビ放送を聴いていて気になる表現が少なくない。MCとはmain casterの略称だと思っていたが、master of ceremonyのことだと聞く。しかし正式の説明を聞いたことはないので、そうらしいと思うだけ。同様に英語の略称(NATOのような)の場合、私はそれでも平均的日本人よりは略称から正式名称が想像できる方だと思っていたが、最近のように使用頻度が高くなってくると分からないことも多い。

 略称も戸惑うが、日本語でもこれまで聞いたことのない表現を聞くとどうにも違和感を覚える。最近では「推し」や「沼ハマ」もそうだが、「更なる」なども昔は聞いたことが無かった。昔なら「一層の」だろう。

 最近やたらに使われる「関係性」という言葉も気になる。実際、「関係」と言い換えて何の違いも感じられないケースがほとんどである。どうしてわざわざ複雑にする必要があるのか? そんなことで庶民との違いを出したいのかと嫌味を言いたくもなる。芸術の世界ならいざ知らず、日常の表現は分かりやすいのが一番だと思う。日本のイスラム圏研究者の中にコーランのことをわざわざクオラン?とか書いている人がいる。専門家振りたいのか?(これは私もやりかねないか)

2023年10月9日月曜日

アラブ・イスラエル紛争

  イスラエルとアラブの対立が何回目かの衝突を引き起こした。これまでの何回かの中東戦争と異なり、今回はパレスチナ解放機構PLO全体が関与しているのではなく、むしろPLO主流派とも対立してガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの武力衝突だが、反イスラエルのアラブ人たちにはその差は大きくないだろう。

 第二次世界大戦後のイスラエル建国時に起こった第一次中東戦争について私の記憶はゼロ。 しかしナセルのエジプトのスエズ運河国有化に対して英仏が起こした第二次中東戦争にイスラエルも加勢した「スエズ事件」は記憶している。英仏の介入を植民地主義と批判した米国に抗しきれず両国とイスラエルは撤退してナセルの威信は高まった。

 私が在英中に起こった第三次中東戦争はイスラエルのアジア側への唯一の港であるシナイ半島のアカバ港をナセルが閉鎖したことが発端となった(スエズ運河はスエズ事件以後イスラエルには使用禁止)。それではイスラエルは立ち行かなくなるのではとの欧米の記者の質問にナセル大統領は黙して答えなかった。それが傲慢な印象与えたこともあり、英国世論は宿敵ナセルに厳しかった。当時大学の食堂で会った著名な日本研究者のストーリー氏は開戦となったらイスラエルは強いと力説したのは願望も込められていたのだろう。敗戦でナセルの権威が低下したことは言うまでもない。

 19世紀に始まるヨーロッパのユダヤ人のイスラエル建国運動が第二次世界大戦後に国連の「パレスチナ分割決議」として結実した主な理由はナチスによるホロコーストへの欧米人の贖罪意識だろう。しかしアラブ人には理解も承認もできなかったろう。

 本来はアラブ人もユダヤ人も同じ中東の民だったが、ユダヤ教とイスラム教という宗教の違いが発端となり敵同士となってしまった。宗教心の薄い大部分の日本人には理解できないところがある。

2023年10月7日土曜日

「国境の壁」建設の再開

  メキシコとの国境の米国側にトランプ政権が建設中だった大がかりな鉄製の壁は民主党バイデン政権発足後は建設中止となっていたが、建設再開が決まったという。近づく大統領選挙を前に国民の不評に抗しきれなかった。

 不運もあった。新しいバイデン政権はトランプ政権よりも不法入国者に甘いとの噂が広がり、越境者は大幅に増加していた。他方、とくに中米諸国は麻薬販売で力をつけたギャングたちが殺人を含む無法状態をつくっており、国外脱出は生命を守るためでもあった。メキシコはむしろ通り道でもあった。とはいえ、何十万人の不法入国を許せば近づく米国大統領選で民主党は甚だしい不利となる。背に腹は変えられなかった。

 他方、ヨーロッパでもEU諸国へのアフリカ難民の大量流入は各国政治の右傾化をもたらしている。あまりの多人数や経済的動機の入国は御免だということだろう。中南米諸国は独立後200年、アフリカ諸国でも独立後数十年を経ているのに経済的に(時には政治的にも)自立できないとあれば、ヨーロッパ諸国も寛大ではいられなくなった。地球温暖化の責任を自覚する先進国側も経済援助以上は御免だというのが本音なのだろう。

2023年10月2日月曜日

民間駐米大使 大谷翔平

  今年度のア・リーグのホームラン王が大谷翔平と決定した。野球ファンの私にとってこれ以上の快挙は考えられない。我が国の野球ファンにとっても同様だろう。投手として10勝を挙げているし、ア・リーグのMVP固いのではないか。エンゼルスの監督が「彼は特別だ」と言ったが、米国の野球ファンも同感だろう。

 米国での大谷の人気はむろん投打での数々の実績に発しているが、それだけでなく野球少年がそのまま大成したような彼の競技への真剣な態度にあろう。以前にも本欄に書いたが、出塁したら盗塁したがる投手などこれまで居ただろうか。 数字は知らないが、彼の盗塁成功率はかなり高いのではないか。ということは彼のシングルヒットや四球はしばしば二塁打の価値があるということ。

 彼の野球への真摯な態度は米国人ファンの目に貴公子のように映っているとでは?  我々日本人は彼ほどの民間駐米大使を持ったことはないのではないか?