2023年7月29日土曜日

朝鮮戦争休戦70年

  今年が朝鮮戦争休戦70年ということで、諸新聞が同戦争を回顧している。実は戦線そのものは2年前から固着していたのだが、北朝鮮も米軍主体の国連軍も敗北を受け入れられないため塹壕戦が続いていたのである。ウクライナ紛争がそうならないことを望むが.............(もうそうなっている?)。

 21世紀の現在、朝鮮戦争が北朝鮮により開始されたことを疑う者はいないだろう。しかし当時は、名前は忘れたが米国人のあるジャーナリストが、戦争開始直前にまもなく米国務長官になるダレスが訪韓していたことなどを理由に韓国先制攻撃説を発表し、我が国でもそれの亜流の書物が複数刊行されたり、総合雑誌にその内容が紹介されたりした。当時は大学生だった私も大学生協の売店でそのうちの一冊を購入した。戦争の具体的展開を追っていれば韓国の先制攻撃説はあまりに不自然に映ったが、もしかしてと考えたのである。

 金日成がソ連の後押しを得て建国した国に対し、当時のソ連共産主義への幻想のためか、「民主主義人民共和国」を名乗っていたためか、我が国でも判断を誤った言論人は多かったし、その延長線上に在日コーリァンの(北朝鮮)帰国運動があった。朝鮮戦争の起源が歪曲なく報道されていれば起こり得ない悲劇だったのだが。

2023年7月23日日曜日

庭木との我が闘争

 庭の温州みかんの木が冬を越せず枯れたと思ったら、今度は一口柚子の木が未だ小さい実をつけながら枯れだした。前者はうっかり身の程を超えた150個の実を成らせた結果と見ていたが、柚子も同じとなると柑橘類の木は寿命が短いようだ(調べたら30年ほどとか)。

 半世紀ほど前に家を建てたとき、狭い庭に不相応な数の庭木の苗を植えた。それまでの公団住宅住いの反動だったのだろう。どれもせいぜい身の丈ほどの背丈だったが樹木の成長のスピードは素人の予想を超えた。十年余りでヒマラヤ杉が邪魔になり切られ、成長の遅い椿も欝陶しくなってこの両三年で2本除去した。毎年美味しい実をプレゼントしてくれた次郎柿も収穫が危険になり、きりかぶとかわった。今秋には何故か成長したら花をあまり付けなくなったアメリカハナミズキの除去を予定している。

 そうした経験から神宮外苑の改造による樹木の減少にそれほどの反撥を感じなかった。ところが今週あたり、軟式野球場が無くなるらしいと知り、野球少年たちのため改造に反対したくなった。私が野球少年だった頃は自動車の通行は稀だったので道でキャッチボールができたし、自宅の近くの女子高(当時は女子中)の校庭は日曜は無人で他チームとの草野球が可能だった。現在はどこの校庭も事故や不祥事を恐れて休日は閉鎖が普通だろう。少年(今後は少女も!)から草野球を取り上げないでほしい!

2023年7月16日日曜日

人手不足対策としての移民

  昨日の朝日新聞に、「人手不足深刻 倒産の危険」との見出しの記事が載っていた。しかし具体的に「従業員を増やしたいが増やせなかった」が全企業の13.5%とのこと。全企業といっても飲食業や観光関連企業など、コロナ禍で従業員を整理した企業のケースが多いのだろう。それでも当事者には小事ではないだろう。

 一方、今朝の同紙には「ミャンマーで日本語 勢」との大見出しで、「渡航費高くても働きたい 能力試験に10万人」との小見出しが続く。軍部クーデター以後の国政の乱れの影響が大きいのだろうが、それにしても10万人が受験するとは驚きである。私はわが国が難民にもっと門戸を開いて良いと考える。しかし、移民も無条件にとまでは考えない。移民は原則として東アジア人中心でよい。

 我が国で活躍する白人の芸能人が最近少なくないし、私などむしろ彼らが実力以上に優遇されていると感じる。しかし彼らも少年少女時代は虐められたという人が少なくない。やはり容貌や皮膚の色の違いから来る違和感を子どもはブレーキをかけずに表面に出すということだろう。その点、東アジア人は日本人に違和感を感じさせることは少ないし、前大戦中に我が国が迷惑をかけた国も少なくないことを多くの日本人が知っている。日本で何年か働いて帰国するか永住するかの別なく歓迎したい。彼らが将来は親日派となるとかなりの確率で言えると信ずる。 私自身の在英体験からも…………。

2023年7月11日火曜日

玉城沖縄県知事の訪中

 玉城沖縄県知事が中国を訪問し、対岸の福建省にある琉球館と琉球墓を訪れた。そもそも沖縄は近代以前は日本と中国の双方に属していた(両属)とも聞くし、福建省にそうした施設が残存しているのなら訪問するのは自然である。しかしその後、中国のナンバー2の李強首相が玉城知事と会見したと聞き驚いた。格式にこだわる中国で、首相が県知事と会うとは。

 会見の報道に接して思い出したのは半世紀以上前の作家井上靖の中国訪問に際しての中国側の厚遇である。数年前?の同氏の『天平の甍』は、遣唐使の時代に高僧を日本に招くとの使命も帯びて中国に派遣された数人の留学僧の物語である。愚直に勉学に励んだ上に鑑真の招聘にも力を尽くした僧、 自分の知的能力に絶望して仏典の筆写と日本招来を自分の使命とした僧、性格が弱く望郷の念にかられた(「日本人は日本でしか本当には生きれないのだ」)挙句、現地人と結婚して仲間たちの帰国を見送った僧らを描いて英国留学半年前の私を深く感動させた( 前進座の公演も見た)。 当時、日中友好を宣伝していた中国が『天平の甍』の人気を見逃す筈もなく井上靖は破格の厚遇を受けた。

 その後、同じく作家の松本清張が中国を訪問したが先方は特別の配慮を示さなかった。自尊心を深く傷つけられた清張は帰国後に『文藝春秋』に旅行記を載せたが、 唐代の高僧名鑑に鑑真の名は載っていないとケチをつけた。名鑑と言っても一種とは限らないし、鑑真の功績が減るわけではないが.............。

2023年7月8日土曜日

苦しい弁明

  今朝の東京新聞の『本音のコラム』に師岡カリーマが、「エジプト人が怒る理由」と題する小文を書いている。怒る理由は二つ。一つ目は「クレオパトラを黒人として描いたネットフリックスの番組にエジプト人が猛反発」したこと。二つ目は「オランダの考古学博物館が西洋の黒人音楽家の創作の源として古代エジプトを紹介した(ように見える)こと」。

 エジプトを含む地中海北岸のマグレブ諸国の住民は黒人では無くアラブ人であり、ましてクレオパトラはギリシア系で黒人ではない。また、黒人音楽家の創作の源として古代エジプトを挙げるのも特別なケースを除けば正しくない。それにしても猛反発を生んだのは「『黒人と一緒にするな』というエジプト人のレイシズム?、残念ながら全否定はできない」とカリーマも認める一方、「でもそうとも言い切れない」「その心情を『黒人差別』で片付けることはそこに自らの投影を見て目を逸らす、文化盗用確信犯の驕りともとれる」と弁明する。文意ははっきりしないが、人種差別は自分達だけではないとのヨーロッパ人の言い訳だと言いたいようだ。

 それもあろう。しかし、書名は忘れたが昔に読んだ各国の教科書を比較紹介した本に、エジプト人は嘗て南隣のスーダン人を奴隷狩りの対象としたこと、しかしこの事実はアジア・アフリカ諸国の歴史教科書には全く言及がないと記されていた。レイシズムに洋の東西はなかったということだろう。

2023年7月1日土曜日

巨大観音像の後始末

昨日の朝の NHKのニュース番組で、巨大なコンクリート製の観音像の後始末の問題を取り上げていた。私が現物を見ているのは車窓からの大船の観音像ぐらい。それでも関東の牛久大仏や高崎山の大仏は映像でお目に掛かっている。しかし、番組に写っていたのは石川県のどこかの大仏であり、同類は全国にあるという。

 仏教の信仰の厚い人たちが巨大観音像を建立することに私は反対ではない。しかし、建立時の番組に写っていた建築主は年間百万人が訪れるだろうと語っていたが、昨日の番組によると建立当初は知らず現在の訪問者は少なく、老朽化して危険物と化している。建築主には9億円の撤去費用を支払う力はなく、行政(県?)が負担することになるという。

 今回は巨大観音像のケースだが、全国にはスキー場をはじめ観光客の来訪を期待して建設されたさまざまな観光施設が当初の人気が去り重荷と化しているケースは少なくないのでは。見込み違いは何事にも起こりうるが、安全のためという理由づけで後始末を公費でというのはいただけない。