2023年3月30日木曜日

山笑う季節の到来

  地球温暖化の影響か、もう東京の桜は満開だ。それだけでなく林の木々も芽吹き始め美しい。この季節になると必ず思い出す人がいる。

 30年近く前になるがソウル大学教授を定年後、私の勤務校の別のキャンパスで西洋史を教えていた韓国人の李さんは日本帝国時代に平壌に生まれた。氏を日本に呼んだ私の親友から、自分が一年間在外研究(ドイツ)するため気に掛けてくれと依頼された。とりあえず新宿の料理屋で、私の後輩の西洋史の同僚と李さんと顔合わせした。すると別の部屋で「平壌中学」出身者の会が開かれていたのでその旨告げたら「あれは日本人が入学する平壌中学です」と返されたのでちょっと気まずい思いをした。しかし李さんは親日家で、昔の日本人の恩師を新聞の「尋ね人欄」で探し出し再開した。しかし同じように日本人の恩師を慕ったと聞く金大中氏を嫌っていた。金日成時代の北朝鮮を肌で知る氏は金大中氏の政治姿勢が許せなかったのである。

 前置きが長くなったが、日本語が達者な李さんも「山笑う」という表現は知らないというので新緑の奥多摩に案内して以来、日帰りドライブに何回も誘った。単身赴任の李さんはもちろん喜んで同行した。韓国にも是非とも来てほしいとの氏の願いに応ずるのは簡単ではなかったが、のち拒みがたくソウルで再会した。他に応募者がなかった韓国ツアーで各地を訪ね、「冬ソナ」のロケ地の南胎島など楽しかった。もう李さんも氏を日本に招いた親友もこの世の人ではないが、「山笑う」季節だけは変わりなく巡ってくる。

2023年3月27日月曜日

行く春を病いとともに惜しみけり?

 季節の変わり目には身体の変調に見舞われるという。それと関係するかどうかは素人にはわからないが、せっかくの美しい季節を十分に祝えないでいる。

 老齢になり、他人事と思っていた花粉症が無縁でなくなった。それでもここ数年は薬を予防的に飲むことで発生を未然に防いでいたが、今年は花粉の量が特別多いためか目と鼻が不調になった。クリニックの指定した薬で症状が軽減したと思ったら一週間ほど前に腰痛が再発した。狭窄症ではなくヘルニアという病名で3種の錠剤と貼り薬で凌いでいるが病状が改善したという実感はない。車の運転は腰部が固定されるためか差し支えないが、それでも中長距離となると臆してしまう。さいわい自宅周辺の桜が半世紀間に大木になったのでそれを眺めて病気の回復を待つつもり。なぜか例年以上に桜花を美しいと感ずるのは負け惜しみか?

  

2023年3月21日火曜日

イラク戦争..........20年のち

 今年がイラク戦争勃発20年ということで新聞各紙に回顧記事が載っている。そこではこの戦争への反省が圧倒的であるのは自然だが、それでは同じ過ちはもう起こらないと断言できるだろうか。

 誘因となった米国同時多発テロ事件はやはり衝撃的であり、米国でイスラム教徒への報復感情が激発したのは無理からぬところがあった。しかし、事件は本来宗教過激派が起こしたものであり、フセイン支配下のイラクはスンニ派主体だったとはいえ、世俗主義国家ではあった。無論そこでのクルド族やシーア派への抑圧は甚だしいものがあった。当時在米のイラク人の「我々はイラクが他の中東諸国並みになってほしいだけなのだ」との訴えには私は深く心を動かされた。 

 しかし、フセイン打倒後のイラクは期待されたような人権尊重国家にはほど遠かった。国内が相譲らぬ二大宗派や複数民族に分かれている国家の場合、脱宗派的政治を期待することは難しい。米国の先見の明のなさは否定できない。しかし私は事後の知恵で米国を批判する人たちの列に加わりたくない。

 先週、これまで激しく対立してきたスンニ派の大国サウジアラビアとシーア派の大国イランが話し合いを始めると発表された。両宗派のある限り中東に流血を伴う緊張は絶えなかった。両国はこの緊張緩和の機会を逃さぬよう英知を働かせてほしい。

2023年3月16日木曜日

子育て支援問題の難しさ

  このブログの読者の平均年齢からすれば強い関心は持てないだろうが、現在の我が国の政治の争点の一つが子育て支援問題である。むろん国庫に余裕があれば大いに援助すればよいのだが、限られた(しかも多額の国債発行で万年赤字を糊塗している)予算からどの程度の金額を振り向けるかは難しい問題である。

 かつては子育て支援といえば日本育英会の奨学金が中心だった。私自身は親の収入の関係で受けたことはなかった(恵まれた学生だったと言われそうだが、一緒に上京した同級生たちが入学後学寮生活を満喫していたのに私にその資格が無いのはけっこう辛いことだった)。その後、育英会の奨学金は受給人数も金額も拡大したが、さらに低年齢者に支給を拡大する上での条件が与野党間の争点のようだ。

 支給条件の拡大についてとりわけ与野党間でもめているのはやはり、親の収入が多額な生徒は除外すべきか否かということ。高所得者の子弟は排除されて当然と考える人は私を含めて多かろう。しかし今朝の『朝日』に比較的高収入だが子供が3人いる親が、所得差による区別を不公平だと訴えている。なるほど同じ収入でも子供の数が多ければ除外に不満を感じて当然かもしれない。現在の日本の家庭の子ども数の平均が1.3人と聞けば、この人は、我が国の将来のため平均以上に貢献していることを評価されてよいとも言える。

2023年3月14日火曜日

WBCで日本チームが四連勝

 WBCで日本代表チームが予選を4連勝し準決勝戦に向かう事となった。翌日のテレビは全局と言ってよいほどその話題で持ちきりだった(新聞休刊日だったし)。私は今回のWBCに、日本の若者の関心をサッカーから野球に引き戻したいとの暗い期待?を抱いていたのでこれ以上の結果はない。

 球場での観戦者は選ばれた大変幸運な人たちらしいが、一度に日本の全チームの花形選手たちの活躍をを見ることができるのだからうらやましい。しかし私の推測に過ぎないが、観衆の半ば以上は大谷翔平のプレイを見に来たのではないか? なにしろこうした機会でなければ彼の活躍は渡米しなければ見れないのだから。

 大谷は第一戦から第三戦までもそこそこに活躍していたが、彼のウリでもあるホームランは無かった。しかし、対オーストラリア戦の初回待望のホームランを放った。翌日のテレビでは彼が打球のスタンド入りを確信して打席から一歩も動かない事実が再三再四指摘された。彼ほどの打者なら感触でスタンド入りを確信出来たのだろう。

 そのホームランボールは当然に客席での奪い合いとなったが、意外にも若い女性のものとなった。すると隣の観客がそのボールを借りてスマホ撮影し、さらに数人が同じことをした。それを伝えたテレビで、米国のスポーツ関係者が米国では考えられないと断言した。なにしろ百万円単位、もしかしたら一千万円近い価値がある記念品であり、米国なら持ち逃げを恐れるのが当然なのだろう。持ち主の女性も一瞬は心配したかもしれないが、隣席のファンの要望を拒まなかった。願わくばそのショットが世界に拡散したことを.............。

訂正  数回前の本ブログで、ドイツやイタリアは米国の要請に応じてアフガニスタンに派兵し、それぞれ数百人の死者を出したと書いた。しかし、ドイツに関して数十人の死者との報道もあり、派兵総数1450人ならそちらの方が正しいかも。ひとまず訂正します。イタリアもドイツ以上ではないだろう。

2023年3月6日月曜日

東京マラソンに想う

  昨日3年ぶり(正常な形では4年ぶり?)に東京マラソンが開催された。私は苦しい事と痛みが大嫌いなので、瀬古や中山が輝いていた時代ほどにはマラソンに関心が持てず、今回も放送はスタート時しか見ていないが、大群集?が一斉にスタートするのを見てその人気に驚いた。それでも出場者は何倍もの選考をパスした人たちだと聞く。

 今朝の新聞による結果は、日本人男子のトップは7位の山下、女子は6位の松田。上位は男女とも3位までエチオピア選手。 オリンピックなどで陸上競技の短距離も長距離もアフリカ勢が強いことは知っていたが、やはりと言うべきか。7位でも日本人歴代3位と大書しなければならないとは.............。

 むかしニューヨークでタクシーをつかまえたら運転手がエチオピア人だった。アベベを知っているかと聞かれたので無論知っていると答えたら彼は有頂天になり、運転は大丈夫かと不安に駆られた。アフリカ系の中でもエチオピア人が長距離を得意とするのは国土の相当部分が高地だからと聞く。

 スポーツ競技が世界大に拡大するにつれ発祥地の国民の優位が崩れるのは天命だろう。冬季オリンピックのスキーの「回転」競技で猪谷千春が日本人として初めて銀メダルを取った(コルチナダンペッツオ大会)とき私が感じた喜びは今の若い人たちには理解できないかも。

 逆に嘗ての日本人の御家芸だった柔道は去年のオリンピックでは好成績だったが、将来は楽観できない(なにしろ柔道の競技人口はフランスが上だとか)。もはや発祥国だからと選手に重圧をかけるべきではない。