ロシアによるウクライナ侵攻の評価をめぐってロシア史研究者の間で意見の対立があり、それが世代の違いとも関連していると何処からともなく伝わっていた。しかしメディアはこれまでどちらの側も批判したくないのか、ほとんど沈黙を守ってきたので、門外漢の私には世代差ということかと想像するしかなかった。今朝の毎日新聞の「即時停戦は正義か」との見出しのコラム『論点』で、両者の代表的見解を大筋だが知ることができた。
旧世代(と言っても私よりは下)の代表は和田春樹東大名誉教授や冨田武成蹊大名誉教授で今回は富田氏が早期停戦と「ロシアに利益のない公正な講和」を呼びかける。毎日のように両軍の死者や民間人の被害を聞かされる我々も賛成したいが、ロシアが「利益のない公正な平和」を受け入れるかとの疑問は拭えない。この派の主張はクリミアや東部ニ州のロシア領化をやむを得ないと受け入れることにあるのだろう。総じてこの世代の主張には善悪二分論的なアングロサクソンの主張への不信があるようだ。
これに対し若い世代の東野篤子筑波大教授は「ウクライナだけに決定権を」という立場で、戦争による国境の一方的変更を認めてはならないとの立場の延長と読める。
もう1人、年齢的に中間(それで依頼された?)岩下明裕北大教授は旧世代の主張を「ウクライナの抵抗を否定すると受け止められかねない」表現は疑問だ」と批判する。しかし国力で上回るロシアがウクライナの主張 (ゼレンスキー大統領はクリミア回復まで停戦しないと主張)に簡単に譲歩するとは思えない。結果として戦争継続とならざるを得まい。
ナチスドイツへの譲歩が何の効果もなかったように、場合によっては莫大な人命の犠牲を甘受しても抵抗しなければならない時もある。しかし近年のウクライナ政権はNATO加盟要請はもちろん、人口の2割を占めるロシア系住民へのウクライナ語強制など侵攻原因の一端をつくったことは否めない。「自らの勢力圏に敏感な国の周辺国は、慎重すぎるぐらいでないと自国を守れない」(岩下明裕)のも国際政治の現実である。
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