2022年8月13日土曜日

地球環境保護先進国の苦悩

  地球環境保護の思想と運動は米国の女性科学者レイチェル・カールソンの『沈黙の春』あたりから始まるが、当初は化学薬品の多用による昆虫類の死滅が鳥も鳴かない春をもたらす( 一例だが)との警告だった。しかし、現在では過大なエネルギーの消費による気温の上昇がもたらす気候変動や海面上昇 (洋上の島国だけでなく先進国の大都市にも脅威)への対処に焦点が移ってきた。

 そうした地球環境保護運動で世界の先頭に立っているのがドイツであることは誰もが認めるだろう。東北大震災による原発事故に素早く反応して原発全廃への道を選んだことは我々日本人にも驚きだった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁でドイツも少なくとも目標の先延ばしに追い込まれている。

 その発端が経済制裁に反発したロシアによる天然ガスの輸出制限である。ドイツは天然ガス供給の55%をロシアに依存していた。そのため世界に代替供給国を求めているが、他国との獲得競争になっている。そればかりではない。海外からの輸入は液化天然ガス ( LNG  )に転換して専用船で運ぶ必要がありパイプラインより割高になる。そのためドイツは最も炭素排出量の多い石炭火力発電も考慮しはじめた (以上『毎日』8.113)

 ウクライナ政府が制裁の中途半端さにどれほど不満を表明してもドイツも西側諸国も無策のまま自国経済への打撃を放置すれば国民の批判を浴び、内閣が持たないだろう。民主主義国家の苦しさであり、またそれほど世界経済は平和を前提として一体化しつつあったということだろう。「治にあって乱を忘れず」とはやはり名言だったようだ。

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