最近、ミャンマーの軍事独裁政権はスーチー氏とともに軍部のクーデターに屈しなかった複数の民間政治家を処刑した。その横暴さには言葉もない。他方、現在のタイの政権もクーデターによる軍事独裁政権である。しかし文民政治家を処刑するといった蛮行には至っていないようだ。この二つの独裁政権の違いはそれぞれの国の歴史や国民性などさまざまな要素が絡んでいるだろうが、私は君主制の有無も大きいと考えている。
ミャンマー軍による批判派の処刑は全く正当化できない。しかし、クーデターを起こした軍人たちは形勢が逆転すれば死刑を含む厳罰を免れられないことを知っているだろう。それに対して王室が一定の権威を持つタイでは、同じくクーデターにより権力を握った軍人たちは今後たとえ権力闘争に敗れても国王が仲裁者の役割を果たす可能性を期待できる。
以前にこのブログで中東で政争が一定程度に保たれている国としてヨルダンとモロッコを挙げた。両国がその政治にどれほどの矛盾を抱えていても、悲惨な内乱は免れている。君主制の緩衝材的効用を見落とすことは賢明だろうか。イランもアフガニスタンも君主制を廃止してからそれを凌駕する宗教独裁の国に陥っている。