ウクライナとロシアの熱い戦いは短期で決着とはならず未だ続いている。私の当初の予想より長引いているのはウクライナ軍の勇戦が第一の理由だろうが、これまでの戦争で本格的に使用されることのなかった携行式の対戦車や対空のミサイルが予想を超える威力を発揮しているようだ。ロシア軍の兵士の戦意が低い可能性もあるが、そうでなくとも散在するウクライナ軍の兵士から放たれるミサイルの威力は兵士たちをひるませるに十分だろう。
この戦争に関してこの1ヶ月余り、メディアに多くの論者が発言したが、目前の戦争ばかりで無い中長期的な視点からの解説は少なかった。戦争は突然起こるわけではなく過去からの不満の蓄積がついに発火点に達するケースが普通と考えるべきだろう。その点で今朝の毎日新聞のコラム『時代の風』への高原明生教授の寄稿は、今回の戦争を「人間の安全保障への脅威」と見る点で他の論者と大きく異なるわけではないが、「冷戦敗北の屈辱へのルサンチマン(怨念の情)がプーチン氏の侵攻の動機だとわかる」と過去30年を遡って捉えている。私も同感である。
さらに昨夜(一昨夜?)のテレビで静岡県立大准教授の浜由樹子准教授が今回の戦争をロシアによるレコンキスタ(再征服、旧領奪回)と表現しているのは納得がいった。レコンキスタとは中世前期にイスラム勢力がスペインを領有したのに対し、スペイン人が中世後期に暫次これを駆逐した事象を指す。メディアでプーチンの非道を批判するのが間違いとは言わないし、テレビで反戦を訴えた女性局員や街頭の反戦デモ参加者の勇気には本当に頭が下がる。しかし、ロシアでは中立的な世論調査でも約8割が今もプーチンを支持していると聞く。それを強権政治の故とだけ理解すべきではない。
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