もう30年近く前、中国南部の雲南省を訪ねるツアーに参加した。北京よりもかなりの辺境の地である雲南省を優先した理由は、ツアーを企画した旅行社が、優れたツアー企画を選ぶ業界の賞を受賞したと紙上で読んだから。
恥ずかしいトイレをはじめ戸惑うことの多いツアーだったが、長江の上流部の激流(虎跳峡)や少数民族(ナシ族)の住む麗江など楽しめた。長江の河岸に大きな太鼓に似た岩のある小村の太鼓鎮は中国の歴史を二度動かしたとガイドが言った。13世紀に蒙古軍が渡河して南宋を滅ぼし、20世紀に国民党軍に追われて共産党軍が、延安への1万キロの「大長征」の途中渡河した(毛沢東は不在とか)。
今年は中国共産党の第一回党大会から百年になる。大会とは名ばかりの個人宅に集まった10人余りの集会から、14億の民に君臨する党への変化は当事者にとっては栄光の百年だろうが、死者数千万人と言われる性急な「大躍進政策」や文化革命の狂気に翻弄され現在も独裁下に自由を失った国民にとっては大災厄の百年であった。
どんなに高い理想を掲げて出発しても、「絶対的権力は絶対的に腐敗する」。学生時代、毛沢東の『矛盾論』は多くの文系学生に争って読まれた。しょせん美辞麗句と分かった時には中国人には批判する自由はなかった。腐敗した国民党と清潔な共産党との対比は当時常識とされたが..........。