2021年1月29日金曜日

歴史上の人物の評価の難しさ

  トランプ前大統領の言動が惹き起こしたと言えるかは分からないが、米国史上の著名人物の評価に異論しきりである。南北戦争での南軍の司令官のロバート・E ・リー将軍の立像が南部で撤去される ( ヴァージニア州知事の発議 ) との話が惹き起こした対立が発端だった。

  その後、リー将軍の名を冠した米軍基地が改名されたと聞くが、立像がどうなったかは知らない。しかし、今朝の東京新聞のワシントン支局の記者のレポートによると、サンフランシスコ市の教育委員会が27日、「人種差別などに加担したと認めた歴史上の人物に由来する公立学校名の廃止を決めた」。具体的にはワシントンとリンカーンの名を冠した二校が改名する。ワシントンは奴隷所有者として、リンカーンは「1862年、先住民ダコタ族との戦いで、38名の一斉絞首刑を認めたことが問題視された」とのこと。全体の3割に当たる44校が見直し対象に当たるという。
  
  「建国の父祖たち」に奴隷所有者が少なくないことは間違いない。リンカーンについては私は知らないが、南北戦争中なのでダコタ族が南軍に味方したのだろうか?  リンカーンはもともと奴隷即時解放論者ではなかった。しかし、独立戦争を闘ったワシントンと奴隷解放宣言したリンカーンが世界の民主主義や人権に貢献した事実はどうなのか。

  昼食後たまたまチャンネルを回したテレビで、米国の黒人解放運動 ( 地下鉄道 ) に尽くしたハリエット・ダナマン ( 黒人女性 ) をアンドリュー・ジャクソン大統領に替えて米国の紙幣の肖像に採用する話が出ていると知った ( これまでトランプが実現にストップをかけていた由 ) 。米国の1ドルから100ドルまでの紙幣には超有名な7人の政治家の肖像が採用されているが、新しく黒人女性の肖像が採用されることには私に異論はない。しかし、ワシントンやリンカーンの名が学校名から除外されることには疑問を感じる。彼らが直面した時代状況も考慮されてよい。

2021年1月24日日曜日

核兵器禁止条約の批准

  核兵器禁止条約が世界五十ヵ国で批准され発効した。我が国のメディアがこれを歓迎するのはわかるが、日本も批准せよとの主張には賛成できない。米国の核の傘の下にあるNATO諸国は批准していない。それが道理というものだろう。被爆国日本は別という論理は論理と言えるだろうか?

  私は以前から我が国のマスコミが、日本が核兵器廃止を唱えるのが被爆国としての権利か義務であるかのように説くのはおかしいと感じていた。権利といえば我が国も大戦中原爆製造の研究を始めていたが、開発競争に敗れた。もし米国に先んじて開発していたら使用した可能性は大きい。義務ということなら、あへて言えば投下国の側の義務ではないか。

  私はこれまでの原水爆禁止運動が無駄だったというのではない。核兵器の残酷さは禁止運動なしには世界の人たちに知られなかったろう。およそ半世紀前、香港かシンガポールでの太平洋戦争のドキュメンタリー映画の上映をテレビで放映していた。フィルムの最後が原爆のきのこ雲で終わると聴衆は大拍手だった。まるで大団円のように。いま両地で同じことが起こらないなら、国際情勢の変化とともに核兵器禁止運動の成果であろう。中南米などに非核宣言地域が生まれたのも同様である。

  しかし、現代世界の法の支配も言論の自由も西側諸国の団結と米国の核兵器に護られている現実に目を閉ざして良いのだろうか? NATO諸国はプーチンにほくそ笑ませることを拒んだ。我が国は習近平や金正恩をほくそ笑ませるべきだろうか。

2021年1月20日水曜日

第二次南北戦争?

  米国で何カ月にもわたりもめた次期大統領選出もようやく20日 (米国時間 )バイデン氏が無事就任して終わるだろう。トランプ支持派といえども四年後のトランプ復活を願うなら少なくとも暴力の再発は抑えるだろう。

  四年後にトランプが再選されるとは思わないが、バイデン政権の直面する諸課題も決して解決容易ではなかろう。ただ、先日行われたジョージア州の上院再選挙で民主党が連邦上院の多数派となったことで前途はかなり明るくなった。トランプ再登場があり得るとすればバイデン政権と議会の対立が泥沼化した時だろうから。

  トランプ政権の四年間は米国内の政治的対立を激化させた。しかし正確に言えばトランプは対立を顕在化させたというべきだろう。東京新聞の『本音のコラム』( 8月28日 )にフリージャーナリストの北丸雄二氏は「南北戦争というタブー」という短文を載せている。それによれば、「今これを『分断』と言いますが、思えば南北戦争での敗北以来、いわゆる南軍に象徴されるような人たちは雪辱を期してこの時を待っていた感さえある。分離は息を潜めていただけです」「まるで第二次南北戦争だね」とアメリカ人の友人に話すと「それは私たちにはタブーなの」との返事だった。

南北戦争での死者数は二つの世界大戦での米軍の死者の合計を上回ると聞く。その傷は未だに癒えていないということなのだろう。リンカーンは戦後の南部に寛大な扱いをめざした。しかし、その横死により、副大統領から昇格したアンドリュー・ジョンソンにはリンカーンのような権威はなく、北部の敵対心を抑えることはできなかった。

  しかし、米国南部の魂とも言うべきジョージア州で今回民主党が2議席を独占したことは、和解への道が開かれていることを示す明るい兆しである。新大統領の手腕に期待したい。


2021年1月14日木曜日

大学入学資格試験の変遷

  大学入試センター試験が廃止され、大学入学共通テストと名を変え、その第一回が今週末実施されるとのこと。前者よりも思考力、判断力、表現力が重視されるそうだ。私は謳い文句をそのままには信じないが、主旨としては素晴らしいと思う。

  昭和ひとけた生まれの私の受験時にはセンター試験はまだ無く、大学進学適性検査 ( 略して進適 ) が発足直後だった。一回か二回、公的な予行演習的テストを受けさせられたが、内容は知能テストに極めて近く、知識量のテストではなかった。地方の高校ではトップを争っていた私の進適の成績はそれほどでもなく、私の心は傷ついた!  さいわい進適本番ではトップ争いに返り咲いたが、その変動の理由は分からなかった。入試にどう利用されたかも分からない。

  センター試験の発足の理由は個別入試に難問奇問が出題されているからとのことだった。それは事実だったが、そうしないと一流大学では志望者の成績に差がつかないのも事実だった。ともあれ、何人もの出題者が熟議して決まる問題の質は確かに向上した。しかし、全国一斉テストの各大学での準備と実施は失敗が許されないだけに大変だったろう ( 私は勤務先が採用する前に退職 ) 。

  今年はコロナ禍のため共通テストだけで個別試験無しで合格者を決める大学が増加するようだ。非常時とはいえそれで済むならこれまでの個別入試は何だったのかということにもなりかねない。入試料収入など問題は複雑だろうが、もう少し入試を単純化した方が受験生が助かるのではないか。

訂正   8月23日のブログで、私が大学の礼拝堂で話をしたと書いたが、最近の大学からのパンフの写真を見て間違いに気づいた。壇上からだったと記憶するので講堂か大教室だったのだろう。

2021年1月9日土曜日

笑いの効用

 今日の朝日新聞 ( 夕刊 』の『惜別』欄に演芸作家の織田正吉氏の追悼記事が載っている。私は初めて聞くお名前だが、やすきよの漫才 ( 私もファンだった )の台本をはじめ多くの笑いの原作者であり、笑いの研究者としても第一人者だったという。

  その氏の発言「真面目さに固執すると、何かのきっかけで一つの方向に押し流されやすい。多面的な見方をするためにも、ユーモア感覚を忘れてはいけない。戦前と戦後、両方を知る者だから余計にそう思う」には同感を禁じえなかった。昨今の民放テレビ番組では、おふざけもいい加減にしろと感じることも多いが、テンション民族とも言われた日本人の性格の改善に貢献するとも思う。

 氏は88歳ということなので戦時は小学生だったことになり、まさに私と同世代である。以前 ( 11月18日) 、私は二世を生きたとブログに書いたが、こどもになにがわかるかとの批判もあろう。しかし同年の織田氏も「両方を知る」と言われる。当時の世相は子供にも分かるほど異常だったのである。

例えば、軍国主義の風潮は小学校にも及び、教師が生徒に張り手で罰するのは珍しくなかった( 私も二校で被害者だった)。兵役につくと新兵は下士官や古参兵の理不尽な私的制裁の餌食となることは当時誰でも知っていた。海軍も例外ではなく、行軍中「海軍精神注入棒」で叩かれた。

私は笑いを浴びて育った日本人があんな理不尽な暴力の時代に帰るとは思わない。織田氏の意見に全面賛成である。

2021年1月4日月曜日

丑年雑感

   今年が丑年というので昨夜のNHKテレビの「ダーウィンが来た!」はウシの話題特集で、「今年の主役! ウシ特集 ウシ科大繁盛の秘密は」というものだった。ウシではなくウシ科としたのはわれわれにも周知の肉牛や乳牛や水牛や野牛以外も含めてのこと。したがってこれがウシ?と思う動物がいくつか紹介されていた。カモシカがウシ科であることは知っていたが、アフリカ大陸に住むキリンもインパラもウシ科とは知らなかった。

ウシが4つの胃を持つとは知っていたが、それが何故なのかは私も知らなかった。番組によると野生の牛は草だけを食べているのにタンパク質や脂肪のかたまりのような身体をしているのは第二の?胃の中に住む細菌の作用で草が富栄養化するためとのことだった。無駄に4つの胃を備えているわけではなかった。

胃が複数あることとどう関係するのかは知らないが、ウシのゲップが地球温暖化の一因と最近言われている。 世界の牛肉 (と牛乳 )の需要が拡大して飼育頭数が激増したのが原因なのだろう。私も牛肉が豚肉や鳥肉よりも好きなので内心忸怩たるものがある。

それより何よりもあれほど従順でかわいい牛にとって人間は鬼そのものだろう。牛が鬼滅の刃を振るう時代がいつか来るのか? ( バカも休み休みにしろ!? )。