2020年7月28日火曜日

野党はもっと地方に目を向けなければ

今朝の朝日新聞に北海道で最北の ( ということは日本最北の) 豊富 ( とよとみ )温泉の記事が載っている。それによると石油が微かに混じった温泉は頑固なアトピー性皮膚炎に多年苦しむ人たちにとって大変有り難い温泉で、全国から移り住む人も少なくないという。

私も同温泉に一泊したことがある。病気治療のためではなく、稚内や日本北端の宗谷岬を訪れる途中に立ち寄った。温泉に石油が浮いていた記憶はないが、利尻富士を間近に見るサロベツ原野の初夏は一級品である。

温泉そのものよりも古い温泉宿の雰囲気に惹かれ、これまで各地の温泉を訪ねた。高級旅館は経済事情とともにサービス過剰を好まぬためほとんど無縁だったが、かつては有名だったが今ではそれほどでもない?旅館を含めて文学者が泊まった宿、川端康成の「布半 」( 越後湯沢 ) 、大町桂月の「蔦温泉」( 青森 ) 、井上靖の「カク長」( 下北、下風呂 ) 、「樅の木は残った」の「不忘閣 」( 青根 ) 等々は満足感が高かった。

それら由緒ある旅館がコロナ禍のため苦しんでいると想像すると何とか政治に一肌脱いでほしい。「Go To トラベル」は特にその実施時期の突然の繰上げもあり、各社の世論調査では反対が軒並み6割以上のようだ。これには業界との結びつきの強い与党幹部とくに二階幹事長への反感が働いているのだろう ( 私も大嫌い ) 。しかし、全国の観光関連の業界に関わる人口は500万人とも聞く。野党は浮動常なき世論やメディアの「Go To トラベル」批判に加わって地方を忘れるなら、やはり頼りになるのは自民党と500万人に確信させないだろうか。心して欲しい。

2020年7月25日土曜日

嘱託殺人の捉え方

ALS患者の女性に対する嘱託殺人の疑いで二人の医師が逮捕された。法定刑は6か月以上7年以下の懲役または禁固とのこと。重い刑とは言えないが、有罪となれば医師免許は没収となろう。軽い処罰とも言えない。

2人の医師は本来の担当医だったわけではないし、医師の一人は130万円の報酬を得ていたとあれば裁判官の印象は良くないに違いない。しかし、医師側と依頼者とのSNS上での交信は1年近い期間と聞くし、もう一人の医師が報酬を得ていたとの報道はない。130万円の報酬といえども弁護費用としては大赤字だろう。

林優里さんと報道される依頼女性は留学経験もあり、人生に積極的に向き合ってきた人のようだ。そのような人に自殺願望に至らせた肉体的精神的苦痛はどれほどのものだったか。想像するだに心が痛む。

同じ病に苦しむ国会議員もいる。そうした同病者が嘱託殺人が安易に認められることに反対するのは理解できる。しかし、患者により病苦の程度は様々だろう。もう少し安楽死が認められる範囲が拡大されてよい。そう考える人は多いのではないか? 今回のケースがその端緒となるならば林優里さんの霊も大いに慰められるのではないか。

P.S.   三回前のブログで戦前の軍人が帯剣していたと書いたが、士官以上の誤りでした。当時の軍人の態度が兵卒に至るまで大きかったので......というのは言い訳だが、軍人が市民を一段下に見ていたのは事実である。

2020年7月21日火曜日

異教徒より憎い異端派

半世紀前の第三次中東戦争でのイスラエルの勝利以来、同国によって続けられたヨルダン川西岸のパレスチナ領への入植活動はネタニヤフ現政権のもとで公然たるものとなり、トランプ米政権がそれを是認すると最近報ぜられた。これまでと同様アラブ諸国の強い反発を生むと予想されたが、反発は形だけに留まっている。

今朝の毎日新聞の『火論』というコラムに大治朋子なる人 ( 同紙の記者?) の「中東勢力圏を変える脅威」と題する解説が載っている。それによると今回のアラブ諸国の反発の鈍さには二つの理由がある。一つにはスンニ派の諸国にとっての「共通の敵イラン」の攻勢に直面して対イラン包囲網が形成されつつあり、いまや彼らにとっての主敵はイスラエルではなくイランとなりつつあることである。

二つにはイスラエルの有するサイバー技術が「中東や南米で引く手あまた」の現状であるとのこと。両地域に多い独裁政権にとってはこの技術が「反政府活動家らの携帯からデータを盗み出し......監視するために使われている」とのこと。

それ以外にもパレスチナ解放機構 ( PLO ) の腐敗など理由は単純ではないだろう。かつて中世にはヨーロッパでもカタリ派などローマ教会により異端とされた勢力は無慈悲に弾圧された。異教よりも異端が許せないという心理に洋の東西はないが、それではイスラエルからの被占領地の回復という目標は遠ざかるばかりだろう。

2020年7月16日木曜日

Go To キャンペーンの是非

コロナ禍をめぐって、Go To キャンペーン ( 観光旅行者への金銭支援 ) の是非が差し迫った話題としてメディアに取り上げられている。感染者の再拡大が起こっているときに政府がその開始日を繰り上げることが賢明かどうか。どこかのテレビで四人の出席者が意見を問われて3対1 ( 高木美保 )でキャンペーン促進が多かったのは意外だった。

無論その理由は理解できる。観光業界や交通機関 ( 航空会社やタクシーなど ) は正常時の最大9割まで顧客を失って苦境に喘いでいる。これを放置して良いのか。そうでなくとも世界的なモノからコトへの消費の変化とともに外国人観光客の増加は日本経済の救世主ともなりつつあった。

他方、5月ごろまでのコロナ禍には先がまったく読めない不気味さがあったのに対し、最近は重症者は多くなく、死者に至っては無しか1人という日が続いていた。企業の経営破綻の方がより重大な結果をもたらすとの判断に私も傾いていた。

ところが今日の感染者が286人と発表され、私も動揺せざるを得ない。あちら立てればこちら立たず。今月いっぱいは様子を見た上で、全国一律ではなく県ごとの実情を加味して判断するのがベターなのかも。他県への私の旅行計画も空中楼閣となりそう。それにして、Go To キャンペーンとの命名は誰の発案か。感じが良くない!( 八つ当たり)。

2020年7月12日日曜日

八十年間の変化

日本社会の高齢化が指摘されて久しい。私自身も昨日87歳になった。思いもかけなかった年齢である。父よりも四半世紀長生きしたことになる。当時、父の死がそれほど早いとは感じなかった。改めて時代の差を想う。

以前このブログで紹介したと思うが、福沢諭吉は自分が一代で二世 ( ふたよ )を経験したと記した。封建の世と近代の世である。私の世代の場合、それほどの変化では無いが、それでも軍国主義と戦争の世と平和の世の違いは大きかった。幸い一年違いで戦時中の学徒の勤労動員 ( 授業無し)も免れ、『学徒動員の歌』を歌うだけで済んだとはいえ。

軍国主義の世と言っても私自身が思想弾圧を受けたわけでも無い。それでも街で軍服と帯剣の兵士を見かけるときの緊張感は覚えている。今はハチ公前広場となっている市電の乗り場から青山通り経由で都心に向かうとき、表参道との交差点で乗客は一斉に明治神宮遥拝をさせられた。戦時の後半は地方にいたため量的な飢えは経験しなかったが、質的な飢えもあることを知っている。

そういう年代の人間からすると、いまの世は極楽のように映る。1944年の東南海地震と1945年の三河湾地震を経験したが、国家が何かしてくれたとは聞かない。それどこか戦時のため被害の報道さえ抑えられた。今も汚職、選挙違反など問題は多々あるが、国民が主権者である以上、それは有権者の責任である。根気よく改めて行くしかない。

2020年7月6日月曜日

白人層の不安を利用するトランプ大統領

ミネアポリスの白人警官による暴行殺人事件以来、米国における人種間の分断が改めて問われ、各地で人種差別を糾弾するデモが頻発している。最近はそれが歴史上の人物の銅像の破壊にまで発展している。その頂点?が「建国の父祖たち founding  fathers 」への評価の変更を求める動きだろう。これがトランプ再選にどう影響するか。

米国独立戦争の二大震源地は商工業中心のマサチューセッツ植民地と大農経営中心のヴァージニア植民地だった ( 未だ、州とはいえない )。そのうち、初代大統領ワシントンや独立宣言起草者ジェファーソンら、ヴァージニアの代表者たちは多くが農場主であり奴隷所有者だった。彼らを奴隷主なるがゆえに批判することは誤りとはいえないが、これまでの米国の歴史教育の否定になりかねない。

徹底した実利主義者のトランプ氏はこの状況をむしろ好機と捉え、自らを米国の政治的伝統の擁護者を演じている。遠くない将来、米国の白人は国民の少数派になる。前回の大統領選でも予想を覆して当選したのは衰退州の白人貧困層の支持者とともに、未来に不安を抱く「かくれトランプ支持者」の支持だった。

ボルトン元補佐官の回想録により、トランプ大統領の目指すのは一にも二にも自分の再選であることは明白になった。トランプ支持者たちもそれに気付かないほど愚かではあるまい。しかし彼らも白人がマイノリティになる未来を何としても受け入れたくない。米国史の「偉人たち」の否定がトランプ再選を助けないよう願うばかりである。


2020年7月1日水曜日

香港国家安全法の起源

昨6月30日、中国の全国人民代表大会で国安法が可決された。即日施行ということなので香港住民は今日からいつ告発され罪人とされるかわからない。きのう香港の自由は死んだも同然である。英国旅券を所持する人は別として亡命を希望する香港人は、母国語が通用する台湾やマレーシアを第一に考えるだろうが、希望者があれば我が国も全員を受け入れたい。彼らは難民なのだから。

中国が全体主義独裁国であることは23年前から明らかだったが、50年間には中国経済は発展し、独裁も緩和されるとだれもが予想した。独裁制が自ら平和的に退陣する例は極めて稀であっても、予想がこれほど残酷に裏切られるとは.........。

日中戦争後、中華人民共和国を樹立した共産党とて、共産主義による人民の幸福達成を願っていたはず。それが裏切られた理由は幾つかあろうが、最大の理由はソ連型共産主義の創始者レーニンの「前衛党理論」を継承したことだろう。

前衛とは大衆の先頭で敵と闘う人を意味する。とすれば大衆より早く真理を獲得した前衛が大衆の意見に左右されるのは不合理である。こうしてソ連型共産主義では党大会より党中央委員会、中央委員会よりも中央委常任委員会、常任委員会よりも党主席 ( ソ連では党書記長 ) の権威が上回っていた ( ソ連で書記長が解任されたのはキューバ危機で面目失墜したフルシチョフだけ ) 。そうした体制が全体主義独裁に至るのは避けられなかった。

香港の民主化運動のリーダーの一人の周庭氏 ( アグネス・チョウ ) の最近の訴えを今朝の『天声人語』が紹介している。「日本の皆さん、自由を持っている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい。本当にわかってほしい 」。私はこの香港自由人の叫びを『朝日新聞』自身に真っ先に肝に銘じてほしい ( もっとも全国紙のうち同紙だけが、この「白鳥の歌」を紹介しているのだが..........)。