ナチスドイツの蛮行はこれまで数多く紹介されてきたが、『アフター・ヒトラー』は敗戦直後のドイツ人が経験した苦難を取り上げていた。その中心は占領ソ連軍下のベルリン市民の受難 ( 無法状態 l) と、中東欧諸国からのドイツ人追放である。
ドイツ軍は対ロシア作戦でおそるべき大殺戮を重ねた。ナチス占領下の西欧や北欧の住民もつらい日々を過ごしたが、ユダヤ人を除けばロシア住民の苦難とはレベルが違っていた。前者はナチスの人種理論に忠実な殺戮だった。
ナチスにとって最悪の敵だったドイツ共産党のテールマン書記長は終戦近くまで、ナチスの獄中ではあれ生存していたし、敗戦時のフランスの指導的政治家や軍人はドイツの強制収容所ではあれ特別待遇で終戦を迎えた。米英軍の捕虜も映画『 大脱走』に見るようにいちおう戦時捕虜の待遇を受けていた。ドイツは東と西で別の戦争を戦ったと言われるゆえんである。その意味ではソ連軍占領下でのドイツ住民の苦難は因果応報とも言えた。
他方、大戦中ドイツの占領下にあった中東欧諸国では戦後1300万人のドイツ系住民が追放され、苦難の末ドイツに帰国した。ドイツ支配時代彼らがどう振る舞ったにせよ、その大多数は何百年もそこで暮らしてきたドイツ系住民だった。その実態は「 民族浄化 」としか言いようがない ( 当時はそういう言葉は無かったが ) 。
「アフター・ヒトラー」が戦勝国の一員であったフランスのテレビ作品だった ( J. J. セルバンシュレベール製作 )ことがひとつの救いだった。
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