2014年2月4日火曜日

日本に高級紙(quality paper)は無い

今朝の新聞を読んでまた始まったと思った。「高梨、ジャンプ本番に万全」との大見出しの下に、女子ジャンプ競技の高梨沙羅選手が「万全の態勢でソチに向かう」との文章が載っている。しかし、世界の強豪が集まり何が起こるか分からないのがオリンピックである。オリンピック競技の勝敗に「万全」などある筈が無い。
高梨選手が世界のライバルの誰よりも金メダルに近いことは世界が認めていよう。しかしジャンプ競技は風向きやジャンプ台の相性など、謂わば変数の多い競技であり、第一人者の高梨といえども万全ではあり得ないし、彼女自身それをよく知っていよう。17歳(?)の少女を国民の期待で押しつぶすような報道は慎むべきである。

実際、過去にも水泳の古橋、橋爪やスケートの黒岩徹選手のように新聞に過大に書きたてられ、国民の期待に押しつぶされたとしか思えない選手は数知れない。戦前のベルリン.オリンピックの前畑秀子選手は、金メダルが取れなければ生きて帰国することは考えていなかったと後年語っている。痛ましい限りであり、今日の選手にそのまま当てはまるとは思わないが、選手を過剰な期待で追い詰めてはならない。

スポーツ欄の記者がオリンピックは水ものであることを知らない筈が無い。それが分かって居ながら「万全」などと書くのは日本の大新聞が高級紙(quality paper)ではないためである。英国の「ザ.タイムズ」、フランスの「ルモンド」等に代表されるクウォリティ.ペイパーは、発行部数が数十万部で日本とは一桁違う。数百万部の新聞は否応なしにセンセーショナリズムに傾く。これは宿命と言ってよい。高梨選手や上村選手はどんな成績でも胸を張って帰国してほしい。尊いのはこれまでの努力であり、結果ではない。

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