今朝の朝日新聞のbe版に山田洋次監督の連載エッセー『夢をつくる』の第39回が載っている。私はトラさん映画はかなり見て楽しんだが、『夢をつくる』の愛読者ではない。今回は山田監督の出世作のひとつ?、ハナ肇主演の「馬鹿丸出し」の原作者藤原審爾の思い出が主だった。同氏の晩年の小説『我らが国のへそ曲がり』の映画化を勧められたが、実現しなかったとのエピソードだった。私は当の小説を読んでいないが、そのテーマが瀬戸内海沿岸の小さな街で、地域の工業化で自然が荒廃していくのに怒る話と知り、複雑な思いに駆られた。
私の高校生時代の親友の1人K君は大学の工学部の製鉄科を卒業し父親と同じ製鉄会社に就職した。会社の主力工場が千葉だったころ、横浜港にクィーン・エリザベス2世号を一緒に見に行ったり、のちに倉敷市が主力工場の所在地になったころ、広島での学会出席の際や中国地方見物の際に倉敷に立ち寄り旧交を暖めた。そのおりに彼が製鉄所の廃棄物による公害に住民との板挟みで苦しんでいると知った。
最近ではK君との連絡は絶え、お互いの年齢を考えればもはやこの世の人ではないと覚悟していた。ところが最近は倉敷の製鉄所の環境対策が進んで海中のプランクトンが減り、アサリが不作になったと聞いていた。直近ではこの辺りの瀬戸内海のシラス類の収穫減少が深刻だと聞く。誰を責めるということではないが、K君の苦悩は何だったのかと思うことはある。
0 件のコメント:
コメントを投稿