2025年2月5日水曜日

生産者と消費者 国民の二面性

  トランプ米大統領の高関税政策(当面はメキシコ、カナダ、中国が対象だが)は本来の自国産業保護だけでなく、間接的ながら「不法移民」の入国阻止を狙っている。むしろ後者の目的が主なのかもしれない。しかし、前者の比重が小さいとも言い切れない。

 第二次世界大戦の一因として自国本位の高関税政策が指摘され、戦後は自由貿易(自国経済の開放)が善とされた。じじつ、百円均一の店の商品の驚くほどの低価格は自由貿易の結果と見ても良いだろう。しかし、国民には消費者の面と生産従事者の側面がある。メキシコやカナダで生産された自動車は米国自動車工業にとって打撃ともなり、従業員への負の影響は小さくあるまい。

 そうした実利の側面をさらに歪めた例が新日本製鉄によるUSスティール社の買収紛争だろう。後者の現在の米国内での生産比率はヒトケタとも聞く。新日鉄による同社の買収はむしろ再生の端緒ともなりうる。しかし同社はUSスチールの名の通り多年、米国の製鉄業のシンボルでもあった。それが新日本製鉄の援助にすがるとは米国人に屈辱と受け取られたようだ。さらにそれが全米製鉄労働組合の買収反対の火に油を注ぎ、民主と共和両党の選挙対策と重なり、買収反対一色となった。経済合理性よりも国民感情が重視された不幸な事件となったが、米国民だけの問題でないことは確かである。

0 件のコメント:

コメントを投稿