新聞の新刊書の広告で藤森晶子著の『パリの「敵性」日本人たち 脱出か抑留か 1940ー1946』(岩波書店)の公刊を知ったので早速購入した。第二次大戦中のパリはその大半の期間中、ドイツ軍とそれに協力させられたフランス政府の統治下におかれた。日本はその時期のほとんどドイツの同盟国だったので、パリ在住の日本人たちは食料の特配を受けるなど、生活に苦しむパリ市民の羨望の対象となった。
大戦下でドイツ兵と親しく付き合ったためパリ解放後に丸刈りとされたフランス女性たちの研究書の著者である藤森氏は、たまたま群集に捕まり引き立てられる日本人の写真を見て、ドイツ軍占領下の在仏同胞の徹底調査を志した。私は同時期のフランス政治(とくに対独協力派)について半世紀前に学会発表をしたことがある。しかし本書によりパリに残留していた少なくない数の日本人について教えられること多大だった。
ドイツの敗北の兆しが感じられたとき、ギリギリでパリの日本人たちの大半はシベリア鉄道で帰国することができた( 当時のソ連は日本との交戦国ではない)。 しかし、夫人がフランス人だったりフランスを熱愛したりでパリに残留した人たちは「敵性外国人」として少なくともフランス政府には敵視された。著者の多大の努力にもかかわらず、写真の引き立てられる日本人の素性は明らかにならなかった。ところが後日、その写真を見たベトナム人はこれは自分の同胞に間違いないと主張した! 真相は確かめようが無いが、たとえ日本人でなかったとしてもそれが機縁となって重厚な一書が誕生したことを祝福したい。
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