2022年7月6日水曜日

アルジェリア独立60年の爪あと

 今年はアルジェリアがフランスから独立して60年にあたる。新聞では他紙に先んじて?『東京』が今朝の紙面で、「近くて遠い国 アルジェリア独立60年  仏側協力者の苦難」との見出しで報道している。

 大戦後、英国は国内世論が賛否両論に割れながらもインド(現在のパキスタンとバングラデシュを含む)の独立を比較的早く承認し、その後友好関係を保っている。それに対してフランスは地中海対岸のアルジェリアを保持することに努め、「アルジェリア戦争」と呼ばれた流血の対ゲリラ戦を十年間も続け、60年前万策尽きてアルジェリア独立を認めた。

 ところが長引く戦争の間、万単位のアルジェリア人がフランス軍を助けて独立派ゲリラと闘った。その結果彼らは残留すれば死刑か重罪を免られず、フランスは道義に関わることでもあり、希望者全員を自国に受け入れた。

 しかし、「アルキ」と呼ばれた彼らとその家族は、以前からフランスに定住していた同胞にさげすまれ、フランス人からも一段下に見られるという境遇に落ちた。彼らに同情しくれるのは「ピエ・ノワール(黒い足)」と呼ばれる、かつてアルジェリアに住み独立後追放されたフランス人だけ(林瑞枝『フランスの異邦人 移民・難民・少数者の苦悩』中公新書 1984)。

 自身がピエ・ノワール出身のフランス人史家は、「全ての立場を満足させる解決策は存在しない」と紙面で語っている。フランス人は植民地権益を守るためと同時に、自国の「共和主義文明」を世界に広めることを善と疑わなかった(各地に凱旋門を建てフランス語を教えた)。それに対して英国は自国文明の普遍性の主張にはこだわらない商人国家だった。

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