安倍元首相暗殺事件の直後は選挙中ということもあってかメディアは「宗教団体」の名をなかなか明かそうとしなかったので、私などもっと有名な団体のことかと思った。統一教会の名が出てようやく犯人への理解が進んだのは私だけではあるまい。
「理解」というと同情を含むと捉えられそうだが、否定しない。犯人山上徹也のこれまでの人生を顧みると第一に母親の愚かさに呆れる。死後の財産を宗教団体に遺贈する例は珍しくないかもしれない。しかし、親から受け継いだ企業を破産させ、そのため息子が大学受験を断念しても統一教会に入れあげたとなると親の資格ゼロと言いたくなる。
むろん第一に批判(むしろ弾劾)すべきは統一教会だろう。宗教団体が信者の寄進に期待するのが誤りではない。しかし相手の無知や苦境を利用して遺産をほとんど召し上げたばかりか、霊感商法に至っては呆れるほかない。30年前に強い批判を浴び、その後メディアもほとんど無関心だったが、その間、「世界平和連合」など三つ四つの「フロント組織」(正体を隠すための当たり障りのない別名の組織)で悪行を継続していたとは.............。メディアも怠慢だった。
統一教会が反共を売り物にしていたことから岸信介元首相と深く長いつながりがあったという。その家族的伝統のためか最近も安倍元首相は自派の某立候補者の支援のためメッセージを寄せていた。山上徹也が本来の目標に近づけず、やむなく元首相を標的に選んだのは「理解」できる。彼が知人に送った通信文を読むと彼なりに追い詰められ苦しんでていたようだ。
戦前の日本で政治家や財界人の暗殺が続いたころ、わが国は昭和恐慌下に庶民は娘を売るなど大いに苦しんでいた。だからと言って暗殺犯たちに「理解」や同情を示した当時の「世論」を是認することはできない。迂遠ではあるが、先ずは政治家の質の向上と国民の政治を見る目の向上を図るほかない。
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