2022年7月25日月曜日

外交の評価

ウクライナへのロシアの侵攻とそれに対するウクライナの抵抗は5ヶ月を経て終わりの見えない戦争の観を呈している。両国とも人命と国富の損失をさらに重ねるしかないのか。どうして外交はこの戦争の発生を防止できなかったのか。
 評論家でかつては職業外交官だった佐藤優氏は「外交は価値の体系、利益の体系、力の体系という三つの体系からなっている」と解説する(『毎日』7月17日)。価値の体系とは例えば民主主義対強権という捉え方。 利益の体系とはこの戦争が自国にもたらす利益と損失の評価。力の体系とは彼我の国力や戦力の評価である。
 開戦から現在までは民主主義国と強権国家の違いが強調されてきたが、独立後のウクライナは激しい街頭行動によって大統領が退任させられるという西欧型の民主主義の基準に合致しないため、EUやNATOへの加盟を許されなかった国である。民主主義対強権の構図は割引して考える必要がある。
 利益の体系からすればクリミア半島や東部2州を回復しない限りはウクライナに具体的利益はなく、その可能性は乏しい(変わりやすい世論を無視できない民主主義国はそこまでの支援はできないだろう)。力の体系は人口や生産力の比較だけでなく電子技術などの能力も計算する必要が大きくなっているとはいえ、ロシアとウクライナの力の差は大きい。西側諸国もウクライナの求めるすべての旧領の回復までは軍事支援はできないだろう。
 無限に戦争を続けることは不可能な以上、遅かれ早かれ現状での停戦となろう。その場合、失われた多くの人命に値するだけの停戦になるとは思えない。


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