2020年12月12日土曜日

フランスのイスラム教対策

  このたびフランスはイスラム過激派対策として「フランスの理念に反する行為」を処罰する法案を閣議決定した ( 『朝日』『毎日』12月11日 ) 。教祖ムハンマドの風刺画を教室で生徒に示した教員が殺害された事件が無論きっかけだが、最近の数次の同様のテロ事件の帰結といってよいだろう。
  ヨーロッパ諸国の中でもフランスは政教分離を国是とすることで知られる。発端はフランス革命だが、19世紀末には村の教会に警官隊が突入するといった激しい紛争にもなった。フランス人の何事にも徹底する国民性とカトリック教会の非妥協的態度が生んだ対立の激しさには、今日の日本人はそこまでやるかとの印象を持つのでは...........。
  問題は政教分離だけではない。イスラム教の女性に対する著しい差別 ( 女子教育反対、少女婚等々 ) も今日のヨーロッパでは到底受け入れられない。最近 (  2018年 ) に出版された2著、末近浩太 『イスラーム主義 』( 岩波新書 )と飯山陽 『イスラム教の論理』( 中公新書)はそのイスラム評価に大きな違いが感じられるが、それでも「イスラームの理念においては、ある国家を統べるために人が法を作るのではなく、神の法を体現するために国家がつくられるのである」(末近)とする点では両著に大きな差はない。飯山氏の説くようにイスラム過激主義とは実はイスラム原理主義であり、イスラムからの逸脱ではない。
  ヨーロッパも数百年前には中世的世界観 ( 神中心主義 ) が支配的だった。ヨーロッパが長年月をかけて克服してきた神中心主義を復活する試み=近代の否定をフランスが許せないのは当然と言える。

  

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