2014年1月7日火曜日

世界遺産指定の功罪

旧年に富士山(むかしは冨士山だった!)が世界文化遺産に選定されたことは喜ばしく、とりわけ自然遺産から文化遺産に切り替えた関係者の着想の良さは表彰ものであろう。古くは山部赤人の昔から大観ら近代絵画に至るまで冨士は文化的創造の源泉だった。むろん自然物としても飛び切り美しい。ただ最近は山麓のどこに行ってもカメラの放列で、その仲間となることは気恥ずかしい限りで、素通りしてしまうことも多い。
しかし、世界遺産への指定は歓迎すべきことばかりでは無いのは残念である。むかし「美幌峠の大観」は北海道の観光地の最たるものだった。とりわけ草原が緑の季節、美幌の町から登ってきて突然、青い屈斜路湖を見下ろす峠に着いたときの感動は特筆ものだった。ところが数年前、道北ツアーに参加したら、バスは美幌峠を夕方暗くなってから通過(!)した。世界遺産知床の観光船に午前中に乗船するには、峠の先の川湯温泉あたりに一泊するのが好都合なのである。知床半島が三度目か四度目だった私はがっかりした。
そもそも今回世界遺産について書く気になったのは、正月休みに送られてきた旅行社のパンフレット(もはやパンフレットなどという厚さではない。写真集とでも言おうか)の印度ツアーに目を通したためである。印度の世界遺産8,9箇所(名前を知っているのは半分以下)をまわるというのに、高校教科書に出てくるアジャンターの石窟寺院も無ければ、ボンベイ、カルカッタといった大都市も入っていない。僅かに聖地ベナレスの入ったツアーはあるが、仏教遺跡を含んだツアーはなかった。もはや世界遺産でなければ見る価値がないと言わんばかりである。日本の旅行社のツアーなのに、これが本当に日本人旅行者の希望通りのコースなのであろうか。
もう個人で印度旅行をする気力の無い私には印度は遠くなるばかりである。

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